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94交通権レポート第8回

函館点検旅行:五稜郭タワー

去る10月9日・10日の2日間に行った、
今年で2回目の点検旅行の報告です。

JR・スーパー北斗を利用して行う
『障害者の障害者による障害者のための』
      点検旅行No.2

スーパー北斗

 こんなタイトルで呼び掛けた点検旅行。今回は『ひまわり号を走らせる会』の貸切り列車に便乗させてもらい、函館の点検に出掛けました。
 昨年とは違い、往復の列車と宿泊のホテルの予約だけで、あとは全て未定の旅行となりました。

『交通権・点検旅行in函館』

○参加者:手動車椅子=4名、電動車椅子=2名、歩行不自由者=3名、介助者=4名
 以上の13名の他北海道新聞社より同行の記者1名。(この取材の結果は後日、道新家庭欄の記事にまとめられ、写真入りで掲載されました)

10月9日(日)
 「ひまわり号」の旅行に便乗した函館市の点検旅行。札幌発8:29。函館着11:36。今年から登場したJR北海道自慢の"振り子式列車"「スーパー北斗」。感想はいかに、、、。
 揺れ(特に横揺れ)が結構激しく、通路を歩くのは大変(大人でもふらついている)
 車いすマークが付いているのに、そして専用の車いすまで積んでいるのに、そして車いすトイレまで設置しているのに、肝心の車いすが通路を通れない。ちょうどタイヤの幅が邪魔になっている。車掌さんに話したら、通れると思っていたとのこと。何とも心もとない状況です。結局車いすは飾り物以外の何物でもない。
 障害者用トイレは車いすのままでは入れない(狭いため)。車掌さんの居る所を見ました。ちょっとしたラウンジのようになっていて、限られたスペースの列車内では勿体ないような広さでした。(この分をトイレに持っていったら良かったのに)
 列車への乗り込みは、デッキまでは車いすをそのまま持ち上げて乗せ、その後車内へはおぶったり、抱き上げたりして座席まで運ぶ。なんとも情けない話です。
 天候には恵まれ、秋晴れの中を列車は快調に走り、定刻に函館に着いた。函館駅のホームは一方の端がスロープになっていてスムーズに駅舎の方へ行けるのはいい。

函館定刻到着
函館駅前

 函館駅前の「ハーバービュー・ホテル」で昼食。「ひまわり号」の人に聞くと、少々高いがこれだけ大勢の車いすの人達が一緒に食事出来るところはあまりないので、、、。ということです。エレベーターが4台もあり、食事の場への移動はスムーズにいった。
 午後1時、いよいよ「ひまわり号」の皆さんと別れて『交通権』のメンバーのみの行動になる。
 列車内で、Mさんが携帯電話でリフト付きタクシーの問い合わせをしたところ、ずっと前(約1週間前)から予約をしていなければ利用は無理、とのこと。(数が少ないせい?)
 函館駅から今夜の宿泊予定の「ホテル ロイヤル柏木」迄凡そ6km。歩行困難な人もいるのでどうしてホテルまで行こうかと考えた。電動車いすはタクシーにも乗れない。結局歩行困難な人達はタクシーで、その外の人達は歩いて行こうという事になった。
  (疲れた。普段歩いていない事がハッキリ結果に出る)
 今回の点検旅行の計画立案者は、忙しくてホテルの予約までしか出来なく、到着以後の計画が何も決まっていなかった。地元の方(勤医協・函館の堀口さん)を紹介してもらい。相談したが、特に良いアイディアもなく、ホテルに着いてから皆と相談することにする。
 まずは食事、ホテルの場所が比較的町外れという感じの所で近くに皆で会食出来る様な店も無さそうなので、ホテルのレストランでする事にした。
 5時過ぎ、それぞれ部屋に入る。すぐにフロントから電話がくる。お客さんが来ているとのこと。堀口さんがフロントまでわざわざ来てくれた。宮下さん、豊田さんと一緒にお会いする。車で来ているから二次会の店の下見に案内してくれると言う。あり難く受け、豊田さんと近くの繁華街まで出掛けた。良さそうな店が1軒だけ見つかった。市電で2停留所くらいなので歩いて行ける。その名も「南蛮亭」店内を見せてもらい、話を聞いて良さそうだと思った。
 午後6:30にテーブルを予約、料理も各人の好みで注文をしておいた。結構高い。でも出てきた料理はボリュームもあり、味もまあまあで満腹した。皆それぞれに満足したようで一安心。
 ゆっくりと楽しんだあと二次会に向かう。車いす2台(うち電動が1台)他4名の総勢6名でした。余り沢山の料理も頼まず、それほどお金を使ったわけではないのに女主人らしい人が親切にしてくれ、話をきいてくれて楽しい時間を過ごすことができました。
 市内観光組(メンバーの一人の知人がワゴン車で、もう一人の知人が乗用車で迎えにきてくれた)は、電動車いすを含め車いすの3人と合計5人が函館の夜景を堪能したようです。何と言ってもホテルに戻ったのが午前様ということですから。

9月10日(月祭日)

7:30から朝食。
 10:00ロビーに集合し、今日の行動について打ち合わせ。

記念写真

 今日も2組に別れて行動することになった。昨日函館駅からタクシーでホテルへ向かった組は途中五稜郭公園に寄ったので、今日はタクシーで市内へ行き元町等の観光スポットを見学することにする。
 駅から歩いてホテルに着いた我々は今日も歩いてホテルからわりと近くに在る五稜郭公園へ行くことにする。
 30分程で公園に着いた。五稜郭タワーという展望台へ昇ることにして、チケットを買う。エレベーターは多くの団体客や一般客で長い列が出来ている。係の人に話すと一人だけ列に並んでくれれば良いとのこと。車椅子の人達は列の側で待つ。結構大きなエレベーターだが一度には乗り切れなかった。
 展望台では普通に立って外を見られる人はなんともないが、車椅子では視線が低すぎて余り良く見えない。ちょっと残念、いや本当に残念な結果だった。手すりが有るのだから、足元の低い所までガラス張りにしてくれると良く見えるのに。
 1時間ほど時間をかけて、さていよいよ函館駅まで行く事にする。ボランティアのNさんが、電動車椅子を分解すればタクシーに乗れると言うので、タクシーで駅まで行くことにして、運転手さんに頼んだら快く乗せてくれた。電動車椅子は分解しても結構重い。運転手さんの手伝いが無くては介護の人が一人では無理だと思った。タクシー3台に分乗して駅まで。(運転手さん近くて御免なさい)
 駅のすぐ側にある函館名物朝市に行く。狭い通りにお店がぎっしり。魚・蟹ばかりではなく衣料品から雑貨まで何でもアリの感じだ。所々のお店で試食を楽しみ、殆ど買物はせずに一周りし、昼食の店を物色。手頃な店を見つけて皆で食事。正直言って余り安くはない。でも味はまあまあで一応は満足した。
 この朝市の周辺に限らず、函館も歩道の整備はやはり余り良いとは言い難い。昨日駅からホテルまでの1時間以上の道のりは、歩道にのさばる様なマンホールの蓋や所々新しくなったインターロッキング舗装、狭い歩道の急な傾斜に特に手動の車椅子の人は苦労していた。札幌もそうだが何処の都市も中心部から一寸離れると歩道は狭いし、路面の荒れも酷い。
 宿泊したホテルにしても、入口のスロープに辿り着くためには、車道から歩道に上がるのに先ず段差。一番段差の少ない所を探したらそこには雨水枡の格子状の蓋がありそれにはキャスターがすっぽりと嵌まる、という状況でした。
 さて、函館駅に集合して昨日到着時に昼食をとったホテルのロビーを借りて最後のミーティングをする。2日間の感想やら反省等を皆に語って貰った。

今回の点検旅行の感想集

(この部分は私が録音したものとメンバーの一人のメモに基づいて私が要約しました。 ホテルのロビーで、雑音がひどく一部聞き取れない部分もあって、間違いもあるかもしれません)
ホテルのロビーで、一休み Mさん(手動車椅子)
 今日は御苦労さまでした。皆さんの観察や、今後こうしたら良いのでは、、、等のご意見を聞かせてください。そうする事でまた良くなって行くと思いますので。是非感想を聞かせて下さい。

Iさん(女性、歩行不自由)
 この様な旅は初めてで、いいメンバーだったし、とても良かった。普段車でピューと通り過ぎるばかりだったから、色々なお店や観光名所なんかを見たことも無かったので楽しかった。特に悪かった事は思いつかないが、列車に一人で乗れないことがはっきり分かったことが 収穫だったのかも?

Iさん(手動車椅子)
 今回初めてこのような旅行に参加出来、皆さんと仲良くさせてもらい、嬉しく思っています。車椅子専用シートが出来たというスーパー北斗は期待外れ、話に聞くのと実際体験するのでは凄い違いがあるなぁー。
 タクシーも親切でしたし、車椅子でも歩けると感じた。なるべくなら自力で、、、、おぶさったりするのは申し訳ないから、自分で動ければいいと思う。

Kさん(手動車椅子)
 2日間、天気にも恵まれて良かった。今回はこの旅行の企画者が一人も参加出来なくて予定もなしで来てしまって、昨年の旭川と比べ、ある程度の大まかな計画だけで、現地で行動を決めるというのも、良いものだと思いました。今回行き当たりばったりに動けたのも天気に恵まれたからだと思いますが、電動車椅子も分解してタクシーに乗れたことで、本当になんとかなるものだと思いました。
 グループで動けたこと、観光も楽しめた事で本当に楽しかったです。

Tさん(歩行不自由)
 まず、今回は有り難うございました。良い天気と良いメンバーに恵まれて良かった。車椅子の人と一緒は初めてで、施設等にチグハグな面が有るのに気がついた。私も計画は大枠だけ決めて、余り細かいことは決めずに行ったほうが良いと思います。事前に地元の人達とコンタクトを取って、交流会等に参加してもらえたら良かったと思いました。

Kさん(手動車椅子)
 『ひまわり号』の人達が乗降を手伝ってくれたので、JRの対応が見られなかったのが残念でした。スーパー北斗、車椅子トイレも出来たと聞いていたのでもう少し乗りやすいのかと思っていた、、、、。来年は『ひまわり号』と別の方がJRの人達の対応等がはっきり分かるので良いと思います。
 現地での行動については、その場その場で考えた方が天候などにも対応出来て良いと思います。

Yさん(電動車椅子)
 団体旅行だったから良かったが、個人旅行であったあらどうか?今日もタクシーに乗せて貰ったが、こちらの介助者がいたからで、単独だったら乗せてくれたかどうか不安に思います。
   駅の電話を見て廻ったが、全部車椅子から届く所にあって、特に車椅子用にはなっていなかったが、これで良いと思う。

Iさん(女性、健常者)
 列車自体に車椅子マークが貼ってあったので、乗る方も安心していたのに、専用車椅子でも通路が通れない。車掌さんに話したら、通れるはずと言う。実際にやって見せて、初めて納得した。JRでは一度も試してみてもいないのはおかしいと感じました。
 帰って主人(車椅子使用)に話したら、きっと「行かなくて良かった」と言うんじゃないかと思います。あの体(結構体重がある人)でおぶって貰ってトイレに行ったりするのは自分も嫌だろうし、おぶる人も大変だと思います。札幌から函館まで3時間余り、一度くらいはトイレに行きたくなるのでは、と思います。専用車椅子を通れる様にしてほしいと思います。

Fさん(電動車椅子)
 列車の中のドアが狭いのと自動ドアが早く閉まるので車椅子が引っ掛かる。もう一度障害者の事を考え、広くゆっくり閉まるようにしてほしい。

Hさん(ボランティア)
 初めてボランティアで参加させていただきました。、列車で車椅子が使えないので、おぶって移動するとき、列車の揺れで支えきれずに左右の人にぶつかることがあった。 トイレが少なく、使用時間も長く掛かるうえ、列車の揺れで余計時間が掛かり、大変だった。街を歩くにも、段差なんかは簡単に上がれると思っていたのに意外に難しく、重い人の場合は一人では無理だと思いました。男性にはもう一人必要だと感じました。

Nさん(ボランティア)
 交通権とかに係わったことがなかったのですが、今回の第1印象として、JRの駅員さんが車椅子を見てサッと顔色を変えたのが分かった。「困ったな」という感じでした。これはJRに車椅子などに対応するマニュアルがきっと無いんだと思います。タクシーの運転手も同じでしたが、『交通権を考える連絡協議会』で電動車椅子の分解法や簡単な介助法などのマニュアルを作って、その場で渡せるようにすれば良いのではないかと思います。

Tさん(ボランティア)
 2回目の参加でした。昨年、今年と対照的な旅行になりました。毎回変化のある点検旅行が良いのではと思いました。ただ、地元の人達とのコンタクト、交流はやはりあった方が良いと思います。札幌との比較や、意見・情報の交換も出来ますから、、。

   

最後に列車を待つあいだに函館駅の駅員さんに色々お聞きしました。

○改札口から昇りのエスカレーターがあるがホームに降りるエスカレーター、エレベーターは無い。
○スロープ付のホームが有るが、改札口からではなく、駅員の誘導で別の出入口(駅舎の外)から出入りする。全てのホームにスロープがあるわけではない。
○駅員は出来るだけ前もって連絡してほしいと繰り返していた。
○スロープのないホームで長距離列車の発着が多いのです。事前に連絡してくれれば駅員が手伝う。
○トイレは比較的広くた使えそうでしたが、入口のスロープが急で辛い、それに便器と洗面台の位置が悪く、使いづらいとのことでした。

 さて、いよいよ帰りです。特別に出発ホームを変更してもらって、スロープのあるホームに出て、列車に乗り込みます。『ひまわり号』の皆さんは次の駅「大沼」に臨時停車しての乗車になるので(始発ということもあり)スムーズに乗車できました。
 『ひまわり号』の皆さんに大変御世話になり、その事にもっと触れなければいけないようにも思いましたが、あくまで点検旅行の報告ということで割愛させていただきました。改めてお礼申し上げます。


 こうして無事札幌へと戻る事が出来ました。今回の点検旅行の成果をどう生かして行くかが今後の課題です。会議などで議論を尽くし、要望などに纏めて行きたいと思います。


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