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交通権を考える連絡協議会

会報第12号

(1996年1月20日発行)

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〈年頭にあたって〉
あらゆる人達と手を結び社会的権利として確立を
会長代行 後藤 昌男

 年末には記録的に早い積雪で、年が明けて9日は陸も空も交通機関全線マヒ、「これでは家にとじこもっているしかない、こんな時交通権の皆んなどうしているかな…」そう思い乍ら新春の御挨拶です。皆さん、今年も力を合わせてがんばりましよう。
 私たちの交通権を考える連絡協議会、1992年7月に発足して、今年は4年目を迎えます。多忙の中、たくさんの取り組みをして来ました。「いつでも、どこでも、誰れもが安心して利用できる交通アクセスを」というスロガーンをかかげて、障害をもつ人にとって交通権は生存権そのものであること、この運動は障害者の生活圏拡大運動であることなどを広く訴え、「福祉のまちづくり」とはなにかを課題提起してきました。
 私たちはこの歩みに誇りをもって、声高らかに強く明るく元気に、今年も運動を進めようではありませんか。そして、又、権利という「言葉を、揚げるだけでなくあたたかい血のかよったものにするため奮斗しましょう。交通権というかたい言葉のむこう側にある優しさを皆んなのものにしてゆきましょう。
 「あらゆる人達と手を結び社会的権利として交通を確立する」これが私たち会規約に記されている「目的」です。この目的実現にむけて仲間の輸をひとまわりも、ふたまわりも大きくしてゆくことも今年の大切な課題だと思っています。たくさんの運動を背景に法的な整備が必要になってきている咋今です。国はこのほど障害者プラン(ノーマライゼーション7ケ年戦略)をきめました。道は昨年7月、9年ぶりに福祉環境整備要綱を改正し、「福祉環境整備指針」として各分野に示しました。札幌市でも2年前に要綱を改正しました。こうした動きの中で私たちはなにをしなければならないのか、21世紀を展望して確固とした歩々をすすめたいと思っています。まだまだ山積している課題に元気でとりくんでいきましょう。



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災害に強い「街づくり」めざして」
「秋の講演会」に106人参加

 ここ数年、大規模な地震による被害が多発している中、地震の多い私たちが住むこの北海道で「阪神大震災」クラスの地震が起きたらどうなるのだろうと、多くの方々が不安を感じています。
 被災地の傷跡も癒えない兵庫県西宮市に在住の頸椎損傷で四肢麻庫障害者の方と、隣接都市大阪で救援活動のセンターを設置した「共同作業所」の方の2名を招いて、11月26六日(日曜日)午後1時から5時まで「災害に負けない、ともに生きる街を」のテーマで、「かでる2・7」を会場に106名の参加を得て開催されました。
 参加者は、障害を持った人だけでなく建築家や行政関係者など幅広い層の分野から、札幌を中心に遠くは旭川・苫小牧などからもわざわざ駆けつけて、4時問にわたって熱心に講師の話に耳を傾け、討論に参加していたださました。

震災を障害者の視点から

 私たちは、常日頃一障害者に優しい街づくりは、全ての人々に優しい街づくり」という考え方のもとに活動を続けてきました。これまで、阪神大震災を教訓として今後の社会づくりを考える企画は沢山ありましたが、障害者の視点から見つめる企画は私たちの周囲にはありませんでした。
 災害が発生してから、4ヶ月後の総会を機会に「被災した現地の障害者の方の話を聞きたい」という思いがつのり、私たちの会としては少々背伸びした大型企画となり、企画の中身を検討するうち「障害者だけでなく、視野を広げてこの間題を考えてみたい」という欲も働き、遂に2名も講師を兵庫と大阪からお呼びすることになりました。

被害は一部の人々に集中

 講師の横須賀俊司さんは、自らの被災体験を通して「阪神・淡路大震災とまちづくり」と題して話をされました。横須賀さんは、「地震後、震度7に耐えうる・・・云々といわれるが、それは間違いだ。震度7以上に耐えられる。・・・でなければならない」と前置きした上で、被害状況の調査資料を示しながら「障害者や高齢者など一定の階層に被害が集中している。
 高齢者はその中でも最大の被害が集中している」と話されました。この地震を障害者の視点から整理すると今まであまり考えたことの無かつた沢山の問題が整理されたようです。例えば肢体不自由障害の場合、行動がとりにくい為に地震後しばらく閉じ込められたままになっていたり、避難所には段差があったり生活が出来ずに危険な倒壊寸前の家に帰らざるを得ないケースも多かった。
 聴覚障害の場合、連日流されるテレビの画面に宇幕放送がされなかったために、「地域の悲惨な状況が全体的なものと錯覚するなど恐怖心をいたずらにあおる結果になったり、正しい情報が提供されない事態が続いた。

縦割り行政の弊害が露呈

 また、行政の対応についても多くの問題点を指摘しました。縦割り行政の弊害がこうした非常事態の中でも露呈し、土木課がすぐに地域の実状調査に入って家屋の状況を把握している、福祉課が事態調査に来たのは3月中旬になってからだった。県の「福祉の街づくり案例」の対象から学校が除外されている。その理由は、公共施設は誰でも使えて当たり前だからあえて明文化する必要がないというのが言い分。しかし、この度の避難所は障害者を受け入れない公共施設だったのは、どのように説明するのか。
 最後に、近隣住民や障害者団体間の日常からの関係づくりとこれをサポートする行政の働きによるコミュニティーづくりが、こうした緊急時に力を発揮することになる。そのためにも、障害者団体の運動の活性化が重要だと呼びかけました。

災害支援の全国センターを設置

 もうひとりの講師の中内福成さんは、障害を持つ子供の親として会社を退職して現在の「障害者共同作業所」を開設したいきさつを紹介したうえで、災害発生時に共同作業所全国連絡会との連携で神戸に支援に入った当時の状況を、その後に報告集をまとめられた資料をもとに生々しく伝えてくれました。そして、ボランティア活動の中で得た障害があることによって受ける多くの実態について、避難所・家建・共同作業所のそれぞれの生活の場所での間題点を整埋して話してくれました。

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 避難所での集団生活になじめない知的・精神障害者の例や、医療機関との連絡がとれないために服薬のコントロールが出来なくなって病状が悪化する内部障害者の例など。移動が不自由なために家庭で孤立している障害者の実態。無許可のために、行政からも冷たく切り離されている小規模作業所の困難な復興活動。
 また今回の活動を通して、大阪には障害者運動のセンターがあったから機敏な支援活動に立ち上がれた事実をあげて、拠点としての機能が存在することの重要性を述べました。
 また、今後の運動の課題として「基本的人権を守るという原点を大切にする運動。緊急時の障害者の救援対策を制度化する。団体に所属しない障害者を視野に入れた活動など」の7点を示し「非常時に備えて、今、暮らしやすい街づくりを急がなければならない」ことを強調しました。

雪国の大地震はもっと悲惨

 お二人の講演の後で活発な討論が行われました。ある建築家の方は「あの規模の地震がこの北梅道であの時期に起きていたら、寒さに加えて積雪による移動の困難性などが加わりもっとひどい状況になっていたと思う。日頃から地域の関係づくりを重視したコミュニティー形成に努力しなければならない。その作業に建築家としての関わりを今後ももっていきたい」と述ベ、ある視力障害の方は「私たちは日頃から慣れた道しか分からない。緊急時の避難所には到底ひとりではいけない。ましてや、避難器具や消火器具の使い方も知らない。自治体が日頃から障害者をよく把握しているとか、町内会にその情報を提供しておくとかのコミュニ一ティーとしての支援体制の整備が必要だ」などと発言されました。
 会では、今同の講演会を単なる講演会に終わらせないで今後に有効に生かすために企画を考えていますが、当面、札幌市や消防関係者との「懇談会」を計画していく予定です。



▲参加者の感想▼

「いざという時のコミュニテイ作り」
菊池 信

 去る11月26日、午後1時から、かでる2・7において「災害に負けない、ともに生きる街を」と題して集会が行なわれた。普段は「交通権」の活動にはほとんど参加してない私だが、あの震災のことを思うと障害を持つ立場でのこういう講演を一度は聞いておこうと参加した。
 講演は「メインストリーム協会」の横須賀俊司氏と、震災に際し障害者の救援活動の全国的窓ロとなった中内美成氏のお二人。4時間にわたる集会の中で、日頃から地域との関わりをいかにして作つておくか、コミュニティ作りが障害者にとっては特に重要であるということを考えさせられた。
 日本人は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」のが得意だが「天災は忘れた頃にやってくる」。この集会で学んだことを無駄にしないようにしたいと思う。


「震災に備えた地域づくりを」
橋本澄子

 「交通権を考える連絡協議会」主催による、横須賀俊司さんの「阪神・淡路大震災とまちづくり」のテーマの講演を聞かせていただきました。横須賀さんご自身が、四肢麻庫の重度の障害をおもちの方ですが、とても力強く、被災体験、行政の対応の違い、障害者の方達の取り組みなどを淡々とお話をして下さいました。
 お話を聞きながら、もし、震災が、この北海道で起きたならと、置き換えて聞いていました。雪国での震災ならば、寒さと、確実に障害者の方達の交通が、孤立状況に追い込まれてしまいます。
 社会保障、社会福祉の乏しいのは、北海道だけではありませんが、お話の中にも、何度も繰り返されてでてきたコミュニティづくりは、本当に、普段の生活の中から作りつづけられ、普段からの地域づくりとして、皆で、考えていがなくてはならない、大事なことだと思いました。
 横須賀さんと同行された中内福成さんも、被災された方達の救援活動、今も、復興活動に奔走され、共に頑張っておられ、お二人のカ強さを感じました。震災によって、残された課題は、たくさんあると思いますが、健康に注意され、頑張っていただきたいと思いました。


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第3回障害をもつ人・高齢者など
移動制約者のための交通権110番

とき 2月24日(土)・25日(日)
      (電話・FAX番号未定)

 通勤・通学・病院通院はもちろん市役所・区役所などへの用事買い物、各種の集いへの参加、音楽会や美術展に行く、雪まつりも楽しみたい等など、外出しなければならないことが多々あります。
 でも、雪のため外出することが非常に困難です。特にこの度の大雪で困ったことはありませんか。
 移動・交通に関する困ったことの相談や、ご意見をお寄せください。
 また、車いすでも利用しやすいお店、手話ができる職員がいるお店などの情報もお寄せください。
 当日、電話受付け、点検などに会員のご協カをお願いします。


会計からのお願い

 今年度分、会費未納の方がおられます。会の運営活動を円滑に進めるためにも、早急に納入をお願いいたします。会員の方には、この会報が届いています。納めたのか、未納なのかはっきりしない方は、会計までお問い合わせ下さい。
郵便振替ロ座:02720−8−3072O
問い合わせ先:会計 石川祐治
電話番号:011−711−4962




ためいき・つぶやき・ほやき

「助けて!!」と大声が出てしまう局地的な大雪。
 「去年は阪神の大震災。今年は札幌を中心とする大雪。2年続きの大災害。「今年も一体どんな年になるのかしら?」と不安が胸一杯に広がった人たちが多かったと思います。ましてや、身体にハンディのある人たちは、この大雪の中でどうしていたのでしよう?食事は…。トイレは…。病院は…?と考えてしまいます。
 私たちは、昨年秋に「震災にそなえた街づくり」の学習をしました。今考えると突然襲いかかる雪害。その最も被害が集中するのは障害者やお年寄り。その時に備えた地域づくりがやはり大切なんだと考えた。
 でも、やがて時がたてば溶けてなくなる大雪の方がまだましか?…。


事務局だより

11月14日 役員会議(難病連)
  阪神大震災講演会参加者集約
  役割分担・横断幕作成など
11月21日 役員会議(難病連)
  講演会最終打ち合わせ 講師送迎など
11月26日 阪神大震災講演会 かでる2・7 13時〜
12月14日 役員会議(難病連)
  講演会の反省、予算・決算状況
  110番の日程にっいて
12月16日 交通権110番部会打ち合わせ(札幌身障センタ)
  110番の内容について




『編集後記』

 新たな気持ちで迎えた1996年。昨年は何かと暗いニュースが多かったような気がします。年が明けてみれば、ため息が出るほどのドカ雪。暖冬が続いたここ数年、この冬が北海道の本来の姿なのかもしれません。除雪を考えると雪はない方がいいと思い、これで全く雪がなければ冬という季節がなくて、逆に寂しく思う。
 会では、冬、の交通権110番を予定してます。ロ−ドヒーティングによる段差の拡大、除雪の壁による見通しの悪さ、いろいろな所で弊害が生じています。しかし、この雪ともう少しつき合って行かなくてはなりません。純白なこの雪を受け入れつつ、暮らしやすさも考えて行きたいと思います。

(Chi)


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