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交通権を考える連絡協議会

会報第13号

(1996年5月7日発行)


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阪神大震災の教訓を
街づくりで札幌市と懇談
事務局長 宮下 高

 阪神・淡路大震災が起きて1年が過ぎましたが、皆さんの脳裏にまだあの自然の猛威、恐ろしさが残つているのではないでしょうか。しかし、これもあと何年かすると私たちの記憶から徐々に薄れ忘れ去られて行き、忘れられた頃に災害が起きるという繰り返しになるのではと言う心配もあります。
 昨年11月に阪神・淡路大震災の教訓を学び、特に障害者の地震対策の参考にと実際に被災した障害者の横須賀氏と、救援活動に当たったボランテイアの中内氏を招いての講演会を開きました。講演会で出された貴重な教訓を大都市札幌に生かすべきだとの声から4月24日に札幌市と懇談会を開催し、札幌市は建設局、建築局、消防局、民生局それぞれから係長クラス8名、交通権からは後藤会長代行をはじめ8名が参加しました。
 懇談会はまず交通権から震災時の障害者対策を項目的に問題提起し、それを受けて札幌市は地域防災計画緊急対策 '95の内容を各セクションから説明し、それに対してこちら側が質問をすると言う内容で進められました。防災と言う大ざなテーマなので2時間と言う限られた時間内では十分な話し合いが出来ながつたように思います。特に障害者サイドの問題よりも札帆市の緊急対策の中身の説明に終始し、交通権の問題提起に対する質問があまりなかったようです。なかでも大震災後につくられた地震対策部会は商工会議所、町内会、ボランティア団体などで構成されており、障害者の代表は入つておりません。そのせいか緊急対策の災害弱者対策も十分と言えるものではありません。
 ただ、札幌市も一回の懇談会で済む問題でないので何回かの懇談会が必要と言つておりますし、また、事前に講演会で出された資料を札幌市に送つており、これらを参考にして中身の充実を計るよう働きかけて行くと同時に「障害者に住みよい町は災害に負けない町にもつながるのだ」と言う考えから日常的な活動にも力を注ぐことが必要だと思います。



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冬の110番のまとめ
40件から67ヶ所の意見

 2月24・25日に行われた「冬の交通権110番」の結果と相談内容(要約)を報告いたします。
◇道路
@ 歩道、交差点の除排雪の徹底
・地下鉄のエレベーターのある駅や障害者トイレの出入口の除排雪が悪く、車いすでは利用できない。
・歩道の除雪が途中からされてなく、視力障害の人には先の状態がわからない。中途半端な除雪は困る。
・歩道のロードヒイーテイングの部分とロードヒイーティングされていない部分の境界及び交差点の段差が大きく、車いすでは通行できない(段差を小さくするように除雪。
A 狭い歩道に電柱があり、又歩道に乗り上げて駐車する自動車のため、通行ができない(車いす、視力障害者)。違法駐車の取席を徹底してほしい。

◇バス
@ リフト付き子バスを運行してほしい。
A バスのステップか高くて乗隆が困難なため、タクシーを使わなければならない。タクシー代が高く大変だ。低床バスが導入されているが、まだ少ないので、さしあたり補助ステップをつけてほしい。(高齢者・下肢障害者・骨折で通院中)
B 音声案内に関すること
・市営バスのターミナルに以前は音声案内があったが、予算がないとのことで音声案内がなくなったが、再開してほしい。(視力障害者)
・バスの行き先の音声案内をしてほしい。(旭川)
C 定山渓からのバスにシルバーシートを設けてほしい。通院のため定鉄バスを利用し通院しているが、いつも温泉客で満員で、長時間立っているのは辛い。
D バス停の時刻表の位置が高く、字が小さくて見えない。位置や文字の大きさを工夫してほしい。
E ウィズユーカードに障害者用を出してほしい。子供用を使うと、バスの連転手に子供用は使えないので、大人用を使うように注意される。

◇JR
@ 札幌駅だけエレベーターを設置しても、他の駅にエレベーターがないのでJRを利用できない。もっと他の駅にもエレベーターを設置してほしい。
A せめて急行停車駅には身障者トイレを設置してほしい。
障害別相談件数相談内容の内訳
障害別件数種 別件数
肢体障害23道 路15
視力障害バ ス10
内部障害J R
不   明タクシー
そ の 他地下鉄
※ その他・・・・
健常者・介助ボランティア
制 度
 合  計40その他12
  合 計67
B 北広島駅に関して
・ホームのエスカレーターの幅が狭く、杖歩行では危ない。エレベーターを設置してほしい。
・駅舎に入るのにスロープがあり、身障者トイレもあるのに、エレベーターがない。又エスカレー夕ーの幅が狭く、車いすでは使えない。エレベーターを設置してほしい。

◇タクシー
@ 身障手帳の提示で割引制度の利用ができるはずだが、用紙に記入するように言われることがあるが、白分で記入できない。(視力障害者・上肢障害者)手帳提示で割引制度が利用できることを各タクシー会仕に徹底してほしい。
A 車いす使用のせいか、タクシー乗り場から乗車するときイヤな顔をされることが多い。タクシ−会社の社員教育をしてほしい。

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◇地下鉄
@ 車いす使用者には唯一利用できる公共交通機関である地下鉄も、エレベーター設置されている出入口でさえ、除排雪が徹底していないため利用できず、タクシーを利用せざるを得ない。積雪期でも地下鉄を利用できるよう、エレベーターの設置されている出入口のロードヒィーティングと除排雪を徹底してほしい。
A 地下鉄ホームのエレベータ−の一番前に並んでいても、元気な人達が横から割り込み、車いす使用者や高齢者が取り残され、利用しずらくなってきた。(特にエレベーターの場所がわかりやすい、東豊線)弱者優先の表示など工夫してほしい。
B 地下鉄駅の身障者トイレはインターホンで連絡しなければ利用できない。「インターホンを押してもすぐに応対してくれないこともあり、もっと利用しやすくしてほしい。
C ホームと車両の段差が大きく車いすでの乗降が困難。乗降口に当たる部分のホームを山形にするなど、車いすの乗降がしやすいように工夫してほしい。(車いすスペースに近い乗降口、とか車掌さんの目につきやすい乗降口など)

◇制度
@ リフト付夕タシーの介助料の助成をしてほしい(利用者助成又は会社に助成し利用者が安く利用できるように)。特に、リフト付タクシーを利用する人は、それが唯一の移動手段と言えます。
A ウィズユ−カードの障害者用を(バスのところと重複)
B 車いす使用者にとって、唯一の公共的交通手段であるタクシーのチケットの枚数とチヶット一枚の利用金額を増加してほしい。
C 積雪期電動車いすのタイヤをスノータイヤに取り替えたところ、スリップが少なく、走行しやすかった。スノータイヤを捕装具で交付してほしい。

◇その他
@ 各地に障害者トイレが増えてきたが、物置がわりになっていたり、トイレの入り口に段差があったりでまだ使いずらいものが多い。又通路がふさがれていて使えなかったりする。
A 駐車場に関すること(車いす使用者)
・札幌市社会福社総合センターの車いす用の駐車スペースは、車いす以外の車が駐車しないようにロープを張ってある。そのため一且車から降りて、警備員に車いすであることを伝え、ロープを外してもらい、車いす駐車スペースに車を移動しなければならない。その都度車いすを出し入れしなければならず、車いす以外の人と比ベ、数倍の時問と労力を使わなければならない。車いすから降りずに警備員に連絡できるようにしてほしい。(車いす使用者3人)
・車いすの人が札幌市社会福社総合センターの普通駐車スペースに駐車した場合、右隣の車が替わると、隣の車との空間が狭くなり、車いすで通れないことがある。警備員にそのことを伝えても、車の持ち主が戻るまで待つしかない、との返答である。センターに出入りする入を呼び止めて、事情を説明して、車いすの車を少し移動してくれるよう、お願いしている。警備員が車いすの人に接近させて駐車した車の人を、館内放送で呼び出すなり、車いすの人の車を乗れる位置まで動かしてくれるような配慮ができないのでしょうか。

(車いす使用者。3人)

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・かでる2・7駐車場は車いすなら無料で、上肢の力がないので、車いすを車に出し入れするのが困難なので松葉杖を使うと有料になる。このような状態の人は無料にしてほしい。
・かでる2・7の駐車場に車いすスペースが2、3台あるが、車いす駐車スペースが既に満車の場合、路上駐車するように言われる。積雪期の雪の状態の悪い時、あるいは大雨等の天気の良否にかかれらずである。駐車場管理規定等で決められているのだろうが、天侯等に配慮して普通の駐車スペースに入れてくれるような(有料でも)柔軟な対応ができないのだろこうか。
・車いすマークがついている駐車スペースを設けているところが増えているが、車いすでない人が駐車しているのが(90%以上)実情です。広報等で啓蒙し、市民のモラルを喚起するとともに、罰則規定を設けるなどして、事実上公共交通機関が使用できない車いす使用者の自家用車がいつでも必ず駐車できるようにしてほしい。
・屋外駐車場は雪の状態によって、車いすでは車を降りてから建物の入り口まで行けないことがかなりある。入るとき通行できても、雪が隆ると帰りに車までたどり着けないこともある。駐車場に係の人がいないところが多く困る。車いす駐車スペースは屋根付きにするなど、積雪期の対策をしてほしい。
B スロープが除雪していなかったり、スロープと雪面の段差が大きく車いすで通れないことががなり多い。スロープをつけている理由を建物の管理者は理解しているのだろうか。積雪期もスロープを使えるようにしてほしい。
C 相談する機関の問い合わせが2件あり、関係機関を紹介した。
D ガイドブックに掲載されていない車いすトイレのあるところの情報が3件寄せられた。
E 桑園駅東口から市立札幌病院への点字ブロックの設置の仕方がおかしいので、改善してほしい。

同日点検の結果
 桑園駅東口から点字ブロックが歩道に誘導されている。歩道はロードヒーティングがされてなく、点字ブロックが雪に隠れてしまう。歩道をロードヒーティングするか、又は点字ブロックをロ−ドヒーティングがしてあるJR構内に設置し交差点に誘導するよう改善が必要。




耳寄り情報PartT

☆交通権110番の時に寄せられた、情報です。
A.キロロのホテルは車椅子トイレがあり、利用しやすい。ただし絨毯の毛足が長く車椅子での走行は不便。

B.札幌の地下鉄東豊線「環状東駅」エレベーター向かいのビル、「山本内科・眼科クリニック」(2階)スロープ・エレベーター・身障者用トイレ完備、待合室も広いスペースで使いよい。
C.札幌市南区藤野(国道230号線)のカウボーイの中庭のトイレは、車椅子で使えます。店が休みの日でも裏の駐車場から入れます。



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歴史と共生できる街に
函館在住・三島 春光

 北海道は、札幌や旭川・帯広などの一部の都市を除いて、農業・漁業をはじめとする地場産業の衰退現象が反映してほとんどの自治体で人口が流失し、苦しい財政事情との闘いを強いられている。行政は生き残りを掛けてどこも街興し策に懸命である。
 函館は、日本で最初に外国との交流が行われた歴史のたたずまいを今に残す街並み。諸外国との玄関になった港町。JR函館駅から立待岬・函館山、そして元町界隈の歴史の影を残しながら観光に街の復興を託して、新しい街への変遷を果たそこうとしている。
 この街に移り住んでようやく1ヶ月が経ったばかり。いくつかのことに気が付いた。
 庶民のほとんどは観光化されて住みににくなった街を避け、内陸の方に宅地造成化が進み入口の分布が確実に移動している。この街には、市民の生活を彩る三通りの色がある。ひとっは、観光客が足を踏み入れる歴史の面影を漂わす街の色。函館駅を境に「歴史」の街と反対に位置し、下町の風情が漂う昔から住み着いた庶民の街(私は、ここに住んでいる)の色。若い世代や新しい市民が家を建てて広がる活気あろ街の色。
 雪の少ないこの街の人々は、段差の少ない玄関やどこの都市よりも人口比で多い病院など、例え身体の不自由な人でも他の街よりは住み易いと考えても不思議ではない(坂道のイメージは観光のイメージで、そこに住む住民は小樽などに比べても圧倒的に少ない)。
 ところが、この1ヶ月に街で見かけた車椅子使用者は、わずかに1人。たった1人。何故だろうと考えてみたが、すぐに思いつくのは道が悪い。表通りから1歩中に入った道が舖装していないのは当たり前。でこぼこの穴だらけ。雨が降れば水たまりがあちこちにできる。表通りに住む障害者はどんだけいるだろう。タクシー会社にリフト車はほとんどない。
 人口が減り続け、30万人を切ってしまったこの街の行攻は、市民の生活よりも街興しの活路を観光に求めて来たのだろう。道路舗装など二の次三の次だったのかと思える。つまり、市民の暮らしや生活は観光の陰に暗くかすんでしまったと見える。
 市民が安心して、生きて・暮らしていて良かったと思える街となってこそ活気ある街がつくれるのではないか。観光に来た人々が明るく笑い賑やかな語らいの陰で、住民がひつそりとただ黙々と生活している姿なんか思いたくもない。
 この街に住みこの街に生きる人々が、声を上げて明るく笑い、明日を語り合う人々の輪が似合う街に。古い歴史の息づかいが聞こえ、歴史を支えた人と新しい街に出会った人が共に住める街に。
 この街の歴史の流れを変えなければ・・・。



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『お知らせ』

当会の会員茶木さん(札幌小規模作業所 自立塾)が
5月1日亡くなりました。ご冥福を心よりお祈りいたします。




総会のお知らせ

日 時
  6月2日(日)午後1時〜
場 所
  札幌市身休障害者福祉センター(二十四軒)3階 大会議室
総会終了後交流会を実施いたします。
会 場 総会と同じ場所で行ないます。
    会費は1人 2,000円。
    たくさんの参加をお待ちしています!




事務局だより

l月 16日 交通権110番部会打ち合わせ会議
       110番要綱・チラシ・ポスター原案作成について
   18日 役員会議 かでる2・7
       110番要綱・チラシ・ポスター内容について
   26日 110番部会打ち合わせ会議 かでる2・7
2月  l日 役員会議 かでる2・7
       110番チラシ・ポスター発送先の確認と印刷担当、
      ボランティアの依頼など
    8日 110番部会 かでる2・7
       110番要綱・チラシ・示スターの発送作業
   22日 役員会議 かでる2・7
       110番参加者の確認と役割分担、ボランティア参
      加者の人数などの最終確認
24・25日 交通権110番実施 二十四軒身障福祉センター
3月 14日 110番部会会議 かでる2・7
       110番相談内容の集計、反省など。
   21日 役員会議 かでる2・7
       110番の結果説明と今後の取り扱い。神戸大震災
      の教訓について札幌市との懇談会について。
4月 24日 「災害に強い街づくり」をめざしての交通権・札幌
      市懇談会 札幌市庁舎9時30分



『編集後記』

 「住みやすい街」をつくるって?少し考えてみた。
 その前に「住める街」でなければならない。では「住める」ことの前提は何?誰もが「住める街)ではなくて、「街(地域)に住める」環境や条件は何だろう?
 「ハート・ビル法」も「交通権」も、その多くが街(地域)に住み・暮らすことができてこその問題である。
 だから、ともに生きるための環境づくりに欠くことのできない、人と人とのコミュニケーション(人間関係)や住環境、そして、やはり大切な経済的なバックボ−ン。
 「交通権」が二の次三の次でいいというのではない。ともかく私たちは「交通権」の重要さに気がついた。いまここから出発して、私たちのまわりには余りにも多くの考え話し合い行動する課題の多さにまた気がついてしまった。
 自分の頭で考え、自分の意志や身体で行動できる幸せをかみしめて、また新しい仲間との出会いを楽しみながらおおらかに前進しようではないか。

(み)



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