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交通権を考える連絡協議会

会報第9号


(1995年3月31日発行)


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障害者に優しくなかった冬の街「さっぽろ」

事務局 小谷晴子

小谷さん

 北海道の冬、雪のある季節は約5か月あり雪のない季節と比べて道路や建物の周辺の状況はかなり変わってきます。車道や歩道の上は雪が覆い、両わきには積み上げられた雪が壁となり見通しを悪くし道幅も狭くなります。また、天候によって路面の状態がアイスバーンやシヤーベット状になったり、新雪が積もり除雪されていなかったりと日々変化するのです。足腰の丈夫な健常者であっても雪道は歩きずらく時には滑って転んでしまうことも。まして、高齢者や杖や車椅子を便用している肢体障害者、また視力障害者など移動制約者にとっては大変な負担になり必要な外出まで妨げられることもあります。しかし、仕事や病院通院の他、買い物、いろいろな集会、コンサートや美術展などにも行きたいし楽しみたいのです。
 そこで交通権を考える連絡協議会として、障害者が冬季出歩くにはどのような障害があるのか具体的に点検するため2月19日(日)に「冬の点検」を行いました。
 車椅子使用者3コースと視力障害者1コースが、4つのコースに分かれ、かでる2・7からと自宅からそれぞれボランティアとともにバス、地下鉄、タクシーを利用し、道立近代美術館、区役所、身障センター、北大病院などの目的地に向かいました。
 目的地に向かうまでの歩道、横断歩道、バス停留所の除雪状態、施設への歩道からまたは駐車場から玄関までの除雪状態、マンホールのくぼみなど歩道の危険筒所、公衆電話が実際に使用できるかなど細かくチェックし記録しました。
 この日は雪が降っていて暖かく路面はシヤーベット状、交差点には大きな水たまりができていてと、まさに点検日よりとなり点検者とボランテイアはかなり苦労しました。
 今回は交通権を考える連絡協議会として初めての「冬の点検」であり、区役所や病院と生活上必要な所のほんの一部の点検でしかありませんでした。長い冬の暮らしの中には移動制約者にとって辛く厳しく不自由なことが数多くあり、しかもその中で生活をしなければならなく、一回の点検ではとても判るものではありません。これからも「冬の点検」を続け改善すべき所を関係機関に要求して行きたいと思います。
 快適な生活を望む者として、「いつでも、どこでも、自由に出歩ける街」を目指して。


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〓点検 … 報告と感想〓

視覚障害者コース

三島 春光

〈指摘事項〉
@白い雪の世界は視覚的な判断がつきにくい。信号を渡って歩道からそのまま道庁の敷地内に入っていった。
A除雪後の交差点の雪の山で横断歩道の場所が分からない。
B交差点にできた水たまりの深さが分からない。
C除雪後のバス停の雪の山が車道から80cmもあり、歩道からも40cmありバスの乗降時に危険。
D雪道の歩道は幅約1m、二人並んで歩くには狭すぎる。おまけに歩道のすぐ脇にマンホールの熱で雪が解けてできた深さ30cmの穴があった。当人にはその穴が何であるか分からなかった。
E豊平区役所の玄関まで敷設された点字ブロックにマットがかぶせてある。また、途中まで雪がかぶっている。

〔対策について〕
@除雪を徴底すること以外にない。
A施設・設備的な問題には、声による伝達という方法を徹底する。
B対策・設備が場所によってまちまちなのは、場つなぎ的な対策を続けているから。改善があれば全ての筒所に行う徹底が必要。
C全盲対策に比べて、弱視対策がおざなりになっている。当事者の意見に耳を傾けて対策を急ぐ。
D視力障害者の日常生活における社会活動は、体験と仲間からの情報の収集によって危険に対処している。仲間のいない障害者の情報ルートがなく、社会活動の著しい制約を強いられることになる。こうした障害者への公的な情報ルートの設置と教育・啓蒙事業に力を入れるべき。
E行政がまず市民に対して範を示す姿勢が大切である。実態は、区役所前の信号のチャイムや点字ブロックに見られるような状況が現実である。



冬の街・点検
戸川 雅詞

 私達の活動で初めて「冬の街の点検」をやろうと決まったのはなぜだろう?夏でさえ満足に出歩けないのに、車椅子や視覚障害の人が冬の街に出かけようなんて・・・。
 事務局・役員会では当然色々な議論がありました。一つは、『車椅子で冬の道を歩く事は特に単独行動など出来ない相談・試す意義がない』という様な意見。もう一つは『いつでも、どこへでも、自由に出歩ける街、を目指す交通権の運動だから、是非やってみよう』おおむねこの二つの意見に集約されると思いますが、様々な議論をかさねて、やはり総会で活動計画にも盛り込んだのだから、とにかくやってみよう、という結論でした。
 担当者だけの打ち合わせ会議を2回、役員会2回の協議を重ねて、何とか実施にこぎ着けました。
 点検内容は、他の皆さんの報告に譲るとして、今回の活動の意義は、当日締め括りの後藤副会長の御挨拶に、十分語られていました。すなわち『この度の阪神大震災の事を考えると、この点検活動も、本当にひどい災害の時はどうかとか、豪雪の時は・春の雪解けの時にはどうするのか、それぞれの時・状況に対するマニュアル作りの為にも、幅広く色々な時にやる必要があります』というものです。



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交通権ボランティアに参加して
倉貫 元美

 交通権を知るきっかけは、同僚がメンバーであり障害を持っていることと、退院患者さんが積極的に参加しているということを知らされてからです。障害を受容し、残された機能で社会参加を決意した人達に、はたして受けとめるべき環境はどうなのだろうかと、つねづね考えていたことが今回のボランテイアに参加することで得られるチヤンスと思いました。
 当日は横なぐりの水を含んだ吹雪。調査日としては最適なコンデェションと思い、いざスタート。マンションの玄関まではスムーズと思ったやさき、歩道はザクザク、ところどころにシャーベット状の水溜まり、車椅子の者の自力での走行は不可能で前輪を上げたり、車椅子ごと持ち上げたりで想像以上にもう大変。やっと地下鉄ホームに到着し乗降調査となる。段差、幅等がホームによって異なり、多くの人は介助や監視が必要と思った。
 路線バスはそもそも車椅子利用者を想定していないので少なくとも三名の介助者が必要と思った。地下鉄、バスの利用はどちらも障害者を優先という事には配慮されていないし、移動する場合は遠回りが常識的になっている印象を待ったた。
 公共の設備には多くのお金がかかると思うが、障害者にやさしい作りでわれば、誰でも楽に利用でさるはずで。マンパワーで出来る限界を全身筋内痛で経験できた事をふまえて、行政に働きかける一人となることを決意しました。




藤井さんコースに参加して
後藤 昌男

 9時「かでる2・7」に集合、行動の説明を受け共通理解を深めた後、宮下車にて藤井宅(札幌市豊平区平岸5条7丁目)へ。すごい吹雪、わざわざこんな日を選んだわけでばないが大変な日だ。「こんな日だって臆することなく外出できることが、藤井さんにとっては必要なのだ」と思う。
 非常時の対応だって必須のこと。なのに藤井さんの家の前ば吹き溜りのまま。訪問していたボランテイアさんのズッポリ足跡があるだけ。これではとても車いすの外出はできない。町づくりの面での障害をもつ人の生活を支援するソフトの部分、コミュニテイづくりの大切さも痛感した。
 介助点検8人グループで点検行動開始。地下鉄東豊線豊平公園駅に向かう。歩車道の区別がなくなっている。歩道は介助者がいでも無理。仕方なく車道を行く。駅前のスロープも雪の下。駅トイレは手洗台が高く使いずらい。イン夕ーホンを押さないと使用できないのも不便。券売機も高すぎる。ホームへの車いすの人の出人口ももう少し低いとよい。
 地下鉄内に設けられた車いす用スペ−スが狭い。藤井さんは足が伸びでいるので乗降車のお客さんと接触して危ない。
 次に東区役所を点検、入り口のロードヒーティングは快適。トイレの手洗台はやっぱり高い。
 次はタクシーに分乗して北大病院に向かう。タクシーのり場は足場がひどい。苦労する。北大病院の入り口や駐車場周辺は、よく除雪されてはいたが、しかし外はあっ雪、でこぼこや轍で、車いす一人ではとても無埋。中の点検は時間がなく十分にはできなかった。
 地下鉄12条駅まで外を歩く。電話ボックスも雪の中、入れないし台も高い。歩道もふみかたまった一本道の箇所が多くて難儀。西11丁目駅はエレベーターがないのがきわめて痛手であった。そこから集合場所難病連までの道は交差点周辺の水はけが悪く苦闘。



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交通権110番要望書提出
道・札幌市・道警から文書回答
JRは回答拒否!

 当会では、「交通権110番」に寄せられた意見などをもとに、昨年末から今年にかけて関係方面に要望書を提出してきました。
 この度、北海道、札幌市・北海道警察から文書で回答が寄せられました。
 なお、今回もJR北海道からは文書回答が戴けませんでした。
 寄せられた回答は、北海道が11項目、札幌市が21項目、北海道警察が4項目でした。すべてをご紹介したいのですが、紙面の都合上それぞれ一項目ずつ掲載いたします。

北海道
(要望項目)
リフト付きタクシ−、ハンディキヤップの運行業者に対して補助を出してください。又、住宅と施設をつなぐ障害者専用交通システムを市町村などで実施できるよう補助金の増額など有効な施策を講じてください。

(回答要旨)
 リフト付きタクシーの導入は、車いす等を使って生活している重度身体障害者の社会参加を促進する上で有効なことであり、道としましては、タクシ−運行業者等が導入るリフト付きククシーの購入費について、市町村を通しての助成を今年度から始めたところであります。
 また、障害者等の専用の移送手段の確保につきましてはこれまでも市町村に対し、福祉バス、在宅福祉サービス車の購入費を助成してまいりましたが、今年度から、福祉バスのリフト付きバスへの整備費用に対する助成も行っているところであり、今後とも事業の充実について検討して参りたいと考えております。

札幌市
(要望項目)
 リフト付きバスを導入してください。
(現状・今後の予定)
リフト付きバスの導入については、7都市(東京都、仙台市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市)において既に実施しているものですが、各都市の利用状況を調査いたしましたところ、利用実績は車両1台当り、1日平均で多い都市でも1.6人、少ない都市では0.1人にも充たない状況と聞いております。なお、各都市の実施後の問題点として、
1 路線の選定が難しいこと
2 リフトの使用回数(1回5分程度)により、運行時間に大きな差異が生じるため停留所表示時刻の運行が困難であること
3 一般客との混乗となるため、一般客の協力が不可欠であろこと
4 車両の購入価格が高いこと等があげられております。
 また、仙台市と比較しますと、本市は積雪寒冷地で降雪量が多く、車道及び停留所周辺の除排雪(自宅から停留所までの間を含む。)の徹底化等、交通局のみでは解決できない問題もあります。
 今後、関係機関の協力を仰ぎながら、更に調査研究を進めていきたいと考えております。

北海道警察
(要望)
「車が歩道に乗り上げて駐車しているため視覚障害者・車椅子使用者の歩行の障害になっています。取締りを強めてください。」について

(回答)
 車両の歩道駐車は、歩行者の通行の妨げとなる迷惑性の高い違反のひとつであり、これまでも取締りを行っておりますが、今後も、これら危険性・迷惑性の高い違反を重点に指導取締りを継続実施し、歩行者が安心して通行でさるように努めてまいります。

JR北海道
(要望)
 障害者用トイレが狭くて入ってからドアを閉めることが出来ません。自動ドアにして下さい。

(回答)
回答拒否。



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ご協力下さい!!
希望の空に飛び立っ!「ベンチレーター」

「ベンチレーター使用者ネットワーク」の代表である佐藤きみ代さんが、この度5月14日に、大阪で開催される『輝きながら今を生きるために ―人工呼吸器をつけて地域社会で生きる―』と言う全国集会に参加する計画をたてています。普通であれば、簡単に飛行機に乗って行く事が出来ますが、きみ代さんの場合は、ベンチレーターを使用して飛行機を利用するためには、札幌から大阪まで約30万円という通常の約6倍の料金を払わなければなりません。座位が取れず寝たままの状態で塔乗するきみ代さんは、簡易ベットを設置したり、ベンチレーターの置き場所を確保するため、9〜10席分を専用してしまうからです(機種による)。
 国内の各航空会社では、一人で複数の席を使用する場合1席目は通常料金(障害者割引=25%)2席目以上は通常の50%の運賃と定めています。また、介助者の運賃(25%割引)も支払わなければならないため、上記のような高額な運賃になってしまうのです。私達が普段あたり前に生活している事が、重い障害を持ったために、生活面でいろいろな制約をよぎなくされ、そのために、人間としての心の平和・自由を奪われる事があってはいけません。
 すべての人が、地域社会で平等に生活出来るように、又、暮せるような社会を実現するためにも、きみ代さんの勇気ある行動に、ご理解とご協カをお願いします。
 “交通権”としても応援する意味で賛同会員(団体)として申し込みました。

※カンパは郵便振替か手渡しでどうぞ
 ロ座番号02790−2−23116
 『佐藤きみよさんの大阪行きを実行する会』

カンパは一ロ=1000円です。一ロ以上何口でもお寄せ下さい。
是非ご協カをお願い致します。

追記
「3月10日に運輸省は、きみ代さんのケースに対して30%割引の約17万円に引き下げたことを確認した」旨、高崎議員より宮下事務局長に報告がありました。




事務局だより

1月14日 役員会(かでる)15時〜
    ※要望書提出・冬の街点検について
  14日 新年会 18時〜
    ※サンルートニュ−札幌ホテル
  24日 冬の街点検部会打ち合わせ(かでる)18時30分
    ※点検表・日程表・要綱・点検コ−ス等、準備・ボランティア呼び掛け
2月 1日 要望書提出
   3日 冬の街点検部会打ち合わせ(かでる)18時30分
    ※冬の街点検準備確認
  14日 役員会(かでる)18時30分
    ※冬の街点検最終確認・要望書提出報告・総会日程とタクシー運転手
     の障害者介助講習会について
  19日 冬の街点検活動(かでる)9時30分〜15時
    ※かでる9時集合
  28日 冬の街点検部会打ち合わせ(かでる)18時30分
    ※点検結果のまとめについて
3月14日 役員会(かでる)18時30分
    ※点検結果報告・総会・講習会準備等


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北海道新聞、毎日新聞、北海タイムス、朝日新聞が
写真つきで記事を掲載しました!

札幌の冬道を点検

車いす・視覚障害者「解けた雪が大変」
 障害者やお年寄りが外出しやすい冬の街づくりを考えようと19日、車いす使用者らが参加して札幌市内の冬道点検が行われた。ロードヒーティングによってできた段差など、夏場とは勝手が違う雪道に苦労しながらボランティアとともに市内を回った。  公共施設を中心に障害者への配慮が進み、一人で出歩く車いす使用者も増えているが、冬は弊害が多く複数のサポーターが必要だ。『改善点を市や道など関係機関に要望しよう』と、交通権を考える連絡協議会が初めて冬に点検を実施した。
 この日は、車いす使用者6人、視覚障害者1人が参加し、それぞれに数人のボランティアが付いた。地下鉄やバスなど公共交通機関を利用して道立近代美術館や区役所などを回った参加者たちは『雪の山ができているので、車いすの高さからは視界が悪い』『解けかかった雪道は特に走行しにくい』など、冬道の困難さをあらためて感じていた。

(1995年2月20日北海タイムス朝刊より)




交通権総会のお知らせ

とき:6月4日(日)午後1時〜
場所:かでる(予定)
シンポジウムの開催を検討中…





『編集後記』

 戦後最大の被害をもたらした阪神大震災は、多くの悲しみを生みました。被災された皆様に心からお見舞い申し上げ吉す。
 同時に、被災地にかけつけたボランティアの方々をはじめ募金ならびに支援物資を送られた人々のエネルギーは心を打つものがあります。
 1日も早い復興を祈らずにはいられません。
 さて、先日あろ人の話を聞きました。この教訓を今後の地城医療や福祉にどう生かすかという話でした。
 こうした災害による被害は、人や物に限らず「弱い立場」に集中する。現に多くの心や身体に障害のある人々に深刻な打撃を与えました。こうした事態を見るとき、街の在り方を考える上で常に「弱者」の尊厳を守る立場から、彼らの目線から「街づくり」とそのシステムを考えなければならない。このことは、最低限の人間としての尊厳が保障されろことなのだ、という話でした。
 私たちの活動と全く共通する問題提起です。このような視点から、私たちの活動をより一層強めなければと自らの胸に刻みました。

(M)