94交通権レポート第4回
パネルディスカッション
「誰にでも優しい交通アクセスをめざして」
1994年5月15日13:00〜15:30
かでる2・7(中央区北2条西7丁目)7F
パネラ〜:TYさん(参議院議員)
我妻 武さん (メビウス会代表)
YTさん (札幌市議会議員)
司 会:曽我 則明 (交通権を考える連絡協議会会長)
(司会者よりパネラ〜の紹介)
司会:
それではこれより“パネルディスカッション”を開催したいと思いますが、その前にパネラ〜のお三方の簡単なご紹介をさせていただきます。
まず、TY先生のご紹介をさせていただきます。1948年に新潟県佐渡のお生まれです。札幌の旭丘高校を経て、北大法学部卒業、弁護士でございます。89年7 月に参議院議員に当選され、文教委員、産業エネルギ〜調査会理事、現在、運輸委員、決算委員理事でございます。日本共産党の中央委員でもございます。一応簡単ですけどTY先生のご紹介をさせていただきました。
次は、我妻武さん。1958年6 月、中川郡本別町生まれでございます。札幌市立山の手養護学校高等部を卒業され、「メビウスの会」代表でございます。92、93年と運輸省の北海道運輸局交通アドバイザーを勤めています。ご本人も車椅子に乗る障害を持つ当事者として、その立場から交通アクセスの問題のお話をしていただきたいと思っています。
それからもうお一方、YTさんでございます。1950年札幌でお生まれで、小学生の時、お父さんの転勤で東京へ行っています。中学、高校と杉並で過ごされ、早稲田大学教育学部ご卒業。1980年に札幌へ来まして、1986年に原子力発電の会で頑張ってこられ、現在は札幌市議会議員として私たち色々な障害を持つ会の中で、参加をしていただき、本当に現場をしっかりと見つめて頂いていると感じています。
こういうことで、本日はこのお三方のパネラ〜に時間の制限もありますが、十分に状況などを話して頂いて、さらに皆さん方と大いに語り合って私たちの交通問題を考えて行けるような会にしたいと思いますので宜しくお願いいたします。それではまず、TY先生からどうぞお願いいたします。
TYさん:
私どもは、この「交通権を考える連絡協議会」が設立された年の10月24日に会の皆さんと懇談をさせて頂きました。その時に曽我会長が“健常者にとって衣食住は基本的権利である。しかし障害者にとっては衣食住プラス交、つまり交通権。この4つが入って初めて基本的権利と言える。「交通権」と言うのは障害者にとって命と密接に結びついた権利なのです。”というお話をされたのが今でも忘れられません。障害者の方にとって人間らしく生き続ける権利として「交通権」の問題をクロ〜ズアップさせて、頑張っている。そして今日のパネルディスカッションということで、私ども国会議員団としても上田耕一郎参議院議員を委員長として推進委員会で精力的に取り組んで来ましたが、私自身も障害者が人間らしく生きられる社会が本物の社会であり、強靭な社会だと頑張ってきた、その立場で少しお話させて頂きます。
国の施策として、「国連障害者年」そして昭和58年から平成4 年までの「障害者の10年」で障害者の完全参加と平等を目指しての10年。という中で、各々の国が行動計画を策定するということで、日本も10年計画を作って、全体としては一歩前進していますが、特に私は運輸委員として深い係わりがあるのですが、「運輸政策審議会」が答申を出しており、移動手段を確保するのは“重要な課題”だと言う認識は相当前から示されているのですが、示されていながらそれに向けての施策がまだまだ進んでいないと言うのが現状だと思います。
しかし、「心身障害者対策基本法」が昨年衆議院が突然解散になったため、廃案になり大変ご心配なさったと思いますが、ようやく昨年11月26日に全会派一致で成立し、23年ぶりの改正ですが、この名称も「障害者基本法」という形で新たにスタ〜トした事は皆さんもご存知の通りです。
この中で前進面も幾つかあり、まず“障害の定義”というのが広がりましたが、これが法律の全面に出てくると言うのではなく、付帯決議に含まれるという形に留まった。私たちは先天的、後天的あるいは精神、肉体に拘らず、その障害によって社会生活や個人の生活が完全にあるいは一部、自分自身で出来ないという全ての人を網羅するのでなければ基本的人権として障害者の完全参加と平等を確立する社会にはなって行かないと、この時の審議では障害者の範囲を広げるべきだと述べて来ました。法律がバラバラになっているので、一本化するのがこれからの課題だと思っています。
この「障害者基本法」の中で、12月9 日を『障害者の日』と定めていて、これは国民に啓発するという事で大変重要な意味がありますので、それを本当に意義のあるものにする中身を作っていくことがこれから大切になっていくと思います。
それから、「障害者基本計画」の策定を政府と自治体に対して規定し、政府にはその策定と国会に対する報告を義務づけたのです。当然ですがちょっと前進したわけです。また、自治体に対しては努力義務に留まっていて国よりも若干緩やかになっています。今後中身でどうするかと言う課題がありますが、この「障害者基本法」がスタ〜としたことで今年からの取り組みが大きな意義があると思います。私も色々な立場で国に対して物を言って行きたいと思いますので、パネルディスカッションの中で、色々と教えて頂きたいと思います。
私の5年間の活動の中で、最初の3年間は文教委員として教育に係わる立場で障害者の問題に取り組み、その後の2 年間は運輸委員として直接交通権に係わる部署で仕事をしてきました。
一応行動計画が出来たり、やりましょうという話があっても、繰り返し繰り返し声を出し運動して、運輸省の役人にまたですか?またエレベーターですか、エスカレーターですか?と言われるくらいに声を出さなければ動かない国の行政の中で、粘り強く繰り返し取り上げてこざるを得ないのが現状だと思うのですが、わずかこの5年間の中で幾つか大きな前進をかち取ることが出来ましたので、今後の施策を考えるために参考にして頂きたいと思います。
交通機関の問題では、JR、バス、地下鉄、航空機など色々ありますが、それが高い場所に設置されている。階段が高齢者や障害者にとって大きな障害になっている。エレベーターやエスカレーターの設置の問題で、皆さんの粘り強い運動と私どもも夏の概算要求と暮れの復活折衝、それに各委員会などで繰り返し取り上げてきましたが、エスカレーターの整備指針がやっと作られ、そして昨年の8月には更にエレベーターの整備指針が運輸省として正式に作られると言うところまで漕ぎ着けました。
新しく駅を作るとき、それから大改良するときには地形上無理だと言う場合、あるいは無人駅で無理だと言う場合を除いてエスカレーターもエレベーターも設置しなければならないと、はっきりうたわれることになりました。
また、既設の駅についても高低差が5メートル以上、乗降客が5,000 人以上については計画的にエレベーターを設置すべきと言う指針が出されました。北海道にはこの条件に合う駅は14カ所あり、帯広、函館、新札幌、桑園、北広島がすでに工事を終えたり、この1 年以内に工事を行うということが決まっています。しかし、札幌では手稲、発寒中央、稲積公園駅とかはまだ設置されない。JR北海道は条件が合っているにも係わらず、なかなか計画をもたない、、。これからも皆さんの運動と結びつきながら運輸省にも働きかけて行き、是非全部を実現させて行きたいと思っています。
昨年10月26日の運輸委員会で「公共交通ターミナル」のエスカレーター、エレベーター、点字ブロックの設置等の要求をした際、これらの整備促進の為に法律を作る必要があると主張しましたところ、豊田局長が法律の必要性も含めて検討したいと答弁しました。法律が出来ると制度としては指針よりずっと上の物ですからエレベーター、エスカレーターの設置が促進すると考えられますので引き続き取り組ん
で行きたいと思います。
次に、足の問題として、リフト付きバスの問題がありますが、これも私共が繰り返し要求してきました。現在全国では59両、東京、大阪、京都、横浜、名古屋、仙台の各公営バスと山梨交通で導入しています。リフト付きバスは普通のバスより1千万円余計にかかるので自治体などでは大変負担がかかるのでなかなか進なかったのですが、自治省が経費の二分の一を交付税措置をすることを認めるようになりました。
運輸省も「交通権」という立場では直接所管に当たる訳ですから自治省任せでなく頑張れと言うことで取り上げて「障害者に開かれた交通体系を作る点で大変重要な手段がリフト付きバスだ」という認識を初めて国会で示しました。地域の行政と連携を取りながら努力して行きたいという約束をしていますし、札幌では積雪を理由に逃げている部分もありますが、同じ様な条件の仙台でリフト付きバスが走っていますので声を上げやすくなっています。
交通機関の運賃割引のことですが、障害者にとって通院、治療などで公共交通機関の利用は不可欠です、JRなどの運賃割引は身体障害者のみだったのが、90年2月に内部障害者に、そして91年12月に精神薄弱者に迄広げることが出来ました。
もう一つ、障害者が介護者なしで、一人で鉄道を利用しようとすると、100kmを越えないと割引きを認めないという不合理を撤廃せよと度々取り上げてきました。昨年3月に運輸大臣からJR各社に検討を依頼していると答弁がありました。私自身昨年12月にJR北海道に直接出向いて要請しました。独自の課題としてはまだ難しいが、運動が広がり声が大きくなれば検討課題としたいと約束しました。これからの運動次第ですので頑張りましょう。
それに、特急料金の割引きも、運輸省に強く申し入れしましたが、誰が、どう負担するかを勉強中ということですので、これも大きな課題として取り組んで行きたいと考えています。
それからタクシー料金の割り引きも91年6月に村岡運輸大臣に申し入れをして、これは数日後に札幌圏で実施され、92年2月には全道全域で実施出来て、喜んでおります。
高速道路料金について93年4月の決算委員会で質問し、建設省に対象者を増やすこと、介助者の運転にも割り引きをしてほしいと要求したのですが、検討しますとの約束を得て、この3月28日やっと実現しました。内部障害者、視聴覚障害者にも広がったのと、重度の障害者の場合、介助者の運転する場合も対象になったことです。“重度の”という制限をなくすのが今後の課題となっています。
割り引き切符を自動券売機で買えるようにと、道内の4駅でモデル実施、昨年10月から全国で買えるようになりました。
さて、羽田空港が新しくなりましたが、行政の姿勢として考えさせられた例としてお話ししたいと思います。この前視察に行って参りました。ここは障害者の立場にたっての施策がなされていて、その理由をお聞きしたところ、空港のある大田区では公共施設を作るとき障害者の為の設備をきちっと付けないと建物を作る許可をしないという基準が出来ていて、やりたくなくても、お金がかけられないからと言っても、やらざるを得ない様になっています。行政が厳しい基準を設けることが本当に大きく前進させることになります。北海道にはこういう物がないのですね、ですから学者の方とか、色々な方々から話しを聞くことはあっても障害者自身が基準を作るときに参画出来ない。
新しい公共施設を作るとき、行政へ障害者がキチット参画出来る仕組みを作る問題も含めて見直して行く必要があると思います。
最後に、運輸省の策定ガイドラインの「公共交通タ〜ミナル」の対象をバス・空港・旅客船の各タ〜ミナルまで広げ、新しい機器を導入する立場で考えようという方向が打ち出されたのと、エレベーター、エスカレーターの設置に今までの超低利融資から国の補助を10%付けることになり、予算に計上されました。
遅々たる歩みではありますが、皆さんのお話を受けて、これからも国政に反映させて行きたいと思いますので宜しくお願いいたします。
司会:どうも有り難うございました。今のTYさんのお話で一番大切だと感じたことは、千歳と羽田の話しが出ましたが、本当に羽田はとても整備されているのはどうしてなのか、と言う事です。大田区には「ハンディ・フォーラムの会」などの障害を持つ人達の交通の問題に付いての運動が非常に多く出ています。障害を持つ人達が声を出して行政に向かっていかなければ、建物などの設備が思うように良くならないと言う事。運動が大きく持たれている所はかなり住み易い町になっている。という感じでした。
では続いてYTさんにお願いいたします。
YTさん:
市議会議員のYTと申します。TY議員から国レベルのお話がありましたので、私は札幌でどういう事をやり、どうなっているか、そして今後どうあるべきかという話をしたいと思います。
「交通権」については私も「誰でも、いつでも、どこでも、安全に、快適にそして安い料金で移動する」のが基本的人権の一つではないかと考えていまして、この「交通権を考える連絡協議会」にも一会員として参加させていただいています。
まず、一つのエピソードをお話しますが、札幌市立病院の移転・新築に伴う交通アクセス(最寄り駅はJR桑園駅)がどうなっているかについての質問を用意していましたが、どの委員会で行うかの段になって、市の関係部局5つくらいで「たらい回し」に遭いました。結局市立病院の質疑の日に質問しまして、JRには伝えて行くという、前向きの答弁を得ましたが。92年当時の札幌市は「福祉の街づくり」という視点では後ろ向きだったと感じます。
次に、来春を目処に見直し作業を進めている「札幌市福祉の街づくり環境整備要綱」について、議会に事前に質問通告をしました。条例でないために強制力がなく、“建物を作る際、市の建築局と事前協議をする事”となっているので、この10年間に事前協議が何件あって、どれ位改善されたのかの議事録を要求したところ、福祉の方が了承して帰ったのですが、すぐ電話で「この質問は取り止めてほしい」といってきました。理由は10年間で事前協議が一回もなかったわけです。
結局、この要綱が出来てもまったくその効力がなかったと言う事がはっきりしたんですね。見直しに当たっては、このような「絵に描いた餅」ではなく実効のある要綱にしてほしいと要望しました。又、対象建物面積でも千平米以上となっていたのをコンビニエンス・ストア〜やファミリ〜・レストランなど公共性の高い建物も対象に含めるべきと、議会で取り上げ、次にお話する我妻さん達にもアドバイスをいただき、委員会で質問するなど、要綱の見直しに取り組んで参りました。
今までの街づくりはやはり元気な働き盛りの人の街ではなかったかなぁと、高齢者、障害者、妊婦や赤ちゃんとかが動きにくい街ではないのかなぁと感じまして、「厚生常任委員会」で福祉に取り組んで来たのですが、これだけでは駄目だ、ハードの面からも、という事で昨年からは「経済公営企業委員会」に所属し(交通局所管なものですから)そこで交通の問題を取り上げています。
私どもは市民参加、市民自治が一番大きな政策の柱ですので、議員だけが頑張っても駄目で、色々な市民の方の運動と連携して初めて議会での質問が活きてくるのではないかと考えています。
その視点から92年に市民80人で、例えば“今日は街へ出て、絵を観て、ご飯を食べよう”というような想定で、一斉に各区の自宅から車椅子に乗って(実際に車椅子利用の障害者と健常者ではあるけれど車椅子に乗って)この「かでる2・7」に集まってくるという事を行いました。その中で、色々な交通の問題が見えてきまして、それを全部チェックしまして、「こんな札幌に暮らしたい」という冊子にまとめました。これをJR、札幌市長、NTT 、税務署、銀行とかへ持って行って、改善の要望をしてきました。
以前、福祉の質問といえば民政局所管でしかなかったのですが、今は建築局、建設局、交通局、都市整備局などにも“福祉の視点”というものを入れて行かなければならない時代になったのではないかと感じます。
札幌の地下鉄には16駅にエレベーターが設置され、東豊線や新しい延長部分には全部エレベーター、エスカレーターが設置されることになり、少しは使い易くなるかなと思います。しかし、先日東豊線の延長部分の福住駅タ〜ミナルを視察したところ、駅部分にはエレベーター、エスカレーターが付いていたのですがタ〜ミナルビルには付いていないのです。それはリフト付きバスなどが運行されていないので、車椅子での利用がないという考えからで、リフト付きバスの導入も遠い先の事と考えられている様でした。
このことから、要望し、設計図を見たりしただけで良しということでは駄目で、中間の点検をやっておけばよかったと感じています。チェック体制も必要ではないかと感じました。
札幌駅には階段昇降機が設置され、地下鉄から改札口迄は車椅子の方も一人で上がれる様になりましたが、JRへの乗り継ぎには別のビルから一度地上へ出て、JR駅へ行かなければならないという状況です。これは札幌駅北口の再開発事業の中でなんとかしたいとの方向が出ています。
「福祉の街づくり」に戻りますが、今度、建築局の窓口に福祉のわかる人が2名配置される事になりましたので、建築確認申請の際、要綱の実効性について調べましたら、4月だけでも、その80%の新築の建物が協議に則って行われており、完璧ではないまでも89%の建物が要綱に沿って建てられるようになってきている状況です。
新しい地下鉄では次の駅を電光表示出来る車両が導入されることになっており、耳の不自由な方にも利用し易い状況になっています。
次にリフト付きバスですが、仙台でも動いているということで、積雪寒冷地だから無理だという口実が通用しなくなってきていると思います。市交通局自動車部、道路維持課、開発局、バス協会そして道警の5者でリフト付きバスの導入についての協議が始まっているということですから、昨年よりは一歩進んだ取り組みになっているとは思います。
私どもは微力ではありますが、3年間福祉の街づくりということで全力を挙げて提案して参りました。まとめとして、昨年ノルウェー、フィンランドを視てきた時の感想を述べさせてもらいます。
ノルウェーのオスロでは、足の不自由な女性が市長をなさっていましたし、フィンランドでは全盲の女性で緑の党の方が建設委員長をやっています。このようなことはあちらでは本当に当たり前のことで政策決定の場に女性が半分くらい入っていますし、障害者の方もかなりの数の方が議会とかに入っていまして、北欧の福祉が進んでいると言われるのは、その辺にあるのではないかと感じました。
全盲の建設委員長が果たして可能かと非常に驚いたのですが、今のハイテク機器を活用することによって、例えば図面などもコンピュータで手で触って判るように浮き上がらせることなど簡単に出来るそうで、ハイテク機器などは福祉にこそ利用されるべきと実感して帰って来ました。
札幌市では今年度「障害者に関わる中長期福祉計画」の策定ということが盛り込まれていて、実態調査が終わった段階です。やはり一番大きいのは当事者の声をどの様に計画に反映させて行くのかということだと思います。今から計画づくりが始まりますので、交通権の運動の方とか、色々な障害者の方々が、自分達の対案なりを持ち寄って事前に運動を盛り上げて行って、その福祉計画の中に「交通権」もしっかりと確立することが重要ではないかと感じています。
札幌市は「全ての人に優しい交通政策」ということを打ち出していまして、その「優しい」という中身は、まだまだ「エコロジ〜切符」とか排気ガスをなくそうとか、環境に優しいという視点が大きい交通政策なんですが、そうではなく元気な働き盛りの人だけではなく、全ての人に優しい交通体系をどうやっていくか。マイカ〜と公共交通機関の便利さとは両立しないのではないかと思っていますが、街づくりをどうやって行くかをト〜タルに考えながら福祉計画を実効性のあるものにしていく為、私も頑張って行きたいと思いますし、是非皆さんの運動も盛り上げていただいきたいと思っています。
それから「札幌市福祉の街づくり環境整備要綱」も強制力がない訳ですから、条例かも視野に入れた運動を皆さんと共に組み立てて行けたらと感じています。
司会:
どうも有り難うございました。交通の問題だけでなく、私たちに大切なのは住むところとか、働く職場とか色々あるのですが、たまたま、この「かでる2・7」の完成直前の点検での体験から、建物が出来上がってからではもう遅いということで事前の参画、中間のチェックなどの重要性を強く感じています。
私たちが必要な部分だけでも計画に参加させてほしいと頼んでも「学者さんも建築屋さんも十分あなた方のことを解っていますから望み通りの物が出来ますよ」と言われる。実際に出来上がって点検してみるとどうもそうはなっていないということが多い。
このことから私たちがもっと声を上げ、口ばしを挟んで行かなければならないと思います。
では最後のパネラ〜、メビウスの我妻さんにお願いします。
我妻 武さん:
急に決まったので十分な準備が出来ていませんが、宜しくお願いします。
お二人から国や市の取り組みのお話を戴きましたが、障害を持っている者の立場からは、まだまだ、ため息を何度もつかなければならない状況です。
実は、昨日千歳空港からJR札幌駅まで帰ってくる用事があったのです。JR札幌駅では階段昇降機に駅員さんが待機していてくれましたが、私の車椅子が普通の物より若干小さいために、昇降機にきちんと合わないのです。駅員がセットしながら「大丈夫だろうか?」という不安の呟きを漏らし。動き出してからも「本当に大丈夫だろうな」という声が私に聞こえてくるのです。それは私の言いたい台詞です。
その時は、ちょうど夕方のラッシュにかかる時間なので「予め何日か前に予約をしてもらわないと駅員の配置が出来ない」と文句を言われました。また階段昇降機の調子がおかしいので「何日か前に連絡してほしい」と言われ、憤慨する思いで帰宅しました。
この様なことは日常茶飯事で、地下鉄のエレベーターの時間制限を、私たち車椅子使用者が交通局と何度か喧嘩した挙げ句、自由に利用できるようになったのですが、今でも早朝、夜遅くの利用が制限されていて、夜など、終電以前(11時)にロックされて利用できない状況です。以前の時間制限があった時と同じ口実が使われています。
リフト付きバスに付いてですが、運輸局の会議で、JRのローカル線がどんどん廃止されて、過疎地ではお年寄りが多いわけで、それだけバスに頼る率も高いのです。北海道にこそリフト付きバスが必要なのではないかと話したのですが、「積雪寒冷」を理由にむずかしいと言われました。では札幌の一部にでも試験的に導入できないかと言っても、現状ではそれすらも難しいという。
先ほどのTYさんのお話で同じような条件の仙台でも走っているということで、それは理由にはならないという事が段々と見えてくるのではないかと思いました。
それから冬期間のことにしても、要はバス停に何らかの工夫をするなどの対応を考えればクリアできると思います。
交通事業者として一番気になることはコストの問題だと思いますが、これも運輸省が交通弱者対策として色々と取り組んでいて、リフト付きバスとしては横浜と金沢がモデル事業として指定され、来年度迄実態調査とか、リフト付きバスを導入した場合の経費などを調査しているところです。
それを基にして、今後必要な公共交通機関の施設とか達成目標時期なども盛り込んで交通計画をまとめるようです。
運輸省から指針も出ていて、市などにも要綱がありますが、拘束力がないから「出来ません」と言われればそれまでで、JR北海道も赤字路線を多く抱えてお金がないとエレベーター、エスカレーターを設置しない。これを何とかしようと運輸省では基金を設けて、整備に低利のお金を貸し出す事になりましたが、エレベーター一基設備するのにも何億円もかかるわけです、最初の計画に入れてやって行けば、いかにコストが安いかは誰でも分かる事です。一度作った物を壊して、後からエレベーターを設置すると言うのは、環境の面でも、お金の面でも頭を傾げてしまいます。
最近ではチョットうれしい話しですが、民間救急車に4 月から福祉タクシーチケットが使えるようになりました。しかしまだ1 級のみの制限があります。まだまだ障害者にとっては割高です。その部分で業者に対する税制上の優遇などを考えていかなければならないのではないかと思っています。
基本としては一般公共交通機関の充実。地下鉄にエレベーターを付け、リフト付き路線バスを走らせ、JR駅舎と車両を整備して利用できるようにする事が必要なのですが、更に重度の障害を持つ人たちの為に、スペシャル・トランスポート、特別な交通システムというか、先ほどの民間救急車や福祉タクシーの方が利用し易いというニーズに応える制度も作って行かなくてはならないと思っています。
公共交通機関の整備が第1 という意見も多いのですが、北海道の場合、駅間距離が長いとか、積雪時の問題などで交通機関を利用する所までたどり着く事が第1の問題になりますので、やはりドアからドアの特別な交通システムも必要だと思います。
最後に、我々が声を上げていく必要、我々の方から具体的な案を交通事業者などに上げていく必要があると思います。車椅子で来られる人たちのためのガイドマップなど、街づくりも含めたトータルな交通システムの整備が必要です。これからも皆さんと一緒に障害者の交通権を確立するために頑張って行きたいと思います。宜しくお願いします。
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