○HOME ○目次へ

95交通権レポート第3回

『交通権を考える連絡協議会』が
去る2月19日(日)に行った、
冬の札幌の街点検活動の報告です。

“札幌の街”冬の点検

 障害をもつ人、高齢者など移動制約者にとって冬は雪のため外出するのが困難です。でも、仕事や通院の他、買い物、いろいろな集会などに行きたいそしてコンサートや美術展、雪まつりも楽しみたい車いす、視力障害の人とともに障害者が出歩くのにどのような障害があるのか冬の札幌を点検してみませんか。
 こんな呼び掛けで行なった冬の街の点検活動。札幌に限らず雪国の宿命ともいえる、積雪をどう克服していくか。ただでさえ外出に障害の多い高齢者、身体障害者などの交通弱者が病院へ、買い物へ、コンサートへ、美術館へと出掛けたい時にどうしたら良いのか?
 協議会のメンバーでは散々議論し尽くしたつもりのこの問題を改めて取り上げたのは、やはり一度は具体的な場所、交通機関等の点検を行った上で問題点を浮き彫りにし、関係機関へ要望して行かなければならないのでは、という考えからです。
 結果的に、マスコミ各社の(TV3社、新聞3社)の思いがけない大々的な取材を受け、報道もきちんとなされた様で(テレビに関しては私はどれも見逃してしまった)所謂デモンストレーション効果もあったのでは、と思います。
 尤もこの取材が途中で少々トラブルの原因になったこともありましたが(地下鉄札幌駅で、、)。
 以下、実施要領・チェックポイント・実際の体験(私の加わったコースのみ)
・最後の反省会の模様等を報告します。

“札幌の街「冬の点検」”実施要領

実施日:1995年2月19日(日)
時 間:午前9時 「かでる2・7」ロビーに集合
    午後3時 北海道難病センターにて解散

★点検コース
1.(車椅子コース)
東区の自宅 → 地下鉄東豊線元町駅 → さっぽろ → JRバス → 道立近代美術館 → 徒歩 → かでる2・7 → 車 → 難病連

2.(車椅子コース)
かでる2・7 → 徒歩 → 地下鉄南北線さっぽろ駅(階段昇降機をテスト)→ 大通り駅(東西線に乗り換え) → 琴似駅 → 徒歩 → 西区役所区民センター → 徒歩 → 地下鉄琴似駅 → 二十四軒駅 → 市立身体障害者センター → 徒歩 → 地下鉄二十四軒駅 → 西11丁目駅 → 難病連

3.(車椅子コース)
平岸の自宅 → 徒歩 → 地下鉄東豊線豊平公園駅 → 東区役所・区民センター → タクシー → 北海道大学付属病院 →難病連(北大病院と難病連の間は地下鉄、タクシー、バス、のいづれかを点検グループで判断。

4.(弱視者コース)
かでる2・7 → 徒歩 → 地下鉄南北線さっぽろ駅 → 大通駅(東豊線に乗り換え) → 美園駅 → バス → 豊平区役所・区民センター → バス → 地下鉄南北線平岸駅 → すすきの駅 → 徒歩 →難病連

※各コースに介助者を4名以上同行させ、点検票、写真撮影等を行う。なお、介助は最低限に止め、出来る限り一人で何処まで行動出来るかを点検する。自動車2台でサポートする。

★点検活動に用意するもの。
1.点検票(気付いた点、写真撮影地点、段差等の計測値などを記入する)
2.カメラ(36枚撮りフィルムを用意する)
3.メジャー (各コースに持たせること)

★チェックポイント
1.横断歩道の除雪状態(除雪による段差等)
2.歩道の除雪状態
  ア.車椅子で通行可能か(幅・路面状態)
  イ.視覚障害者「全盲」(白杖歩行・ガイドヘルプは可能か)
  ウ.視覚障害者「弱視」(点字ブロック無しの歩行は可能か)
3.歩道の危険箇所
  ア.マンホールの窪み
  イ.手押し信号機のボタン付近の除雪状態
  ウ.その他
4.施設へのアプローチ
  ア.歩道から玄関までの除雪状態(雪の段差・雪面状態)
  イ.スロープの除雪状態
5.バス停留所の除雪状態
  ア.車椅子・視覚障害者に利用出来るように除雪されているか
  イ.バス運転手の態度
6.問題点を出来るだけカメラで記録し、フィルムを使い切る。
7.ポイント毎に障害者の感想を出来るだけチェックリストに細かく書く。
8.公衆電話
点検経路にある公衆電話について、除雪・高さ・実際に使用出来るかをチェック

★注意事項
1.車には十分注意すること。
2.歩行中のスリップ・階段の上げ降ろし時のスリップに注意すること。

 私は2番目のコースに参加しました。たまたまこのコースは「かでる2・7」から出発という事で、取材が集中して西区役所・区民センター迄ほとんどの取材者が同行し、途中はまるで見世物行列みたいな状態でした。
 最初のつまずき、、。かでる2・7付近は、皆さん御存知の通りビジネス街ということで官庁も集中しているため歩道のロードヒーティング等が比較的行き渡っている地域です。然し車道はそうはいきません。当然車道には雪が残っている事もあるわけです。当日は生憎の雪降り、気温が比較的高い日でシャーベット状の雪が残り、歩道と車道との段差もしっかりと有りました。歩道上は一人で車椅子を漕げてもこの段差と雪は乗り越えられません。いわゆるキャスター上げという状態で車椅子を押すのです。
 地下鉄さっぽろ駅へは駅前にある民間のビル(五番館西武デパート)のエレベーターを利用します。他には有りません。地下に降りて地下鉄駅まで結構傾斜のきつい通路を通ります。腕の力の弱い人には苦しい所でしょう。
 さて、第1のチェックポイント、階段昇降機のテストです。券売機での切符購入はスムーズに出来ました。自動改札機は勿論通れませんから駅員に通路を開けて貰います(一応自分で開けて入る事も可能です)。階段昇降機を頼みましたら快く受けてくれたようです。(もっとも後になって私達が同行していることを知ると事前に連絡してほしいと言いました)
 ところが駅員が取材の人達と何か揉めている様です。傍にいって聞き耳を立てると「取材の連絡を受けていないから止めてほしい」という事らしいのです。マスコミの人達は「許可が必要なんて聞いたことない」という様な事で取材を止める気は無いようです。何分かが無駄に費やされ、ようやく階段昇降機がセットされてホームから改札口のある階まで上がってきました。写真をお見せ出来ないのが残念です。立派な機械で、これなら安全に昇降出来ると思いました。
 改札口を通ってからホームに降りるまでに約10分ほども掛かってしまいました。

駅員さんに話を聞いてみました。
 「この階段昇降機を操作するためには2人の 駅員が必要で、その為に手の空いた 駅員が揃うまでに少し時間が掛かります。」

Q. 操作している所を見た限りでは、一人で十分操作出来るようです。
a. 「規則で必ず2人で操作することになっています。」
Q. 利用者はどの位いますか?
a. 「結構利用されていますよ。」

 こんな遣り取りがありました。階段昇降機の操作はワイヤー付のリモコンで操作でき、車椅子はしっかりとガードされた状態で乗って居ますのでどう考えても駅員一人で十分という気がしますが、、、。
 ともあれ、無事地下鉄車内の人となりました。一駅で乗り換えです。この乗り換え駅の大通駅にはまがりなりにもエレベーターが有りますので一人で十分乗り降りが出来る筈なのですが、、。札幌の地下鉄には少々問題があるのです。それはホームと車両の段差の問題で、平均10cm程あります。この平均と言う表現は札幌独特の問題です。車輪がゴムタイヤなので乗客の多寡によって段差が変化するのです。またホームと車両の隙間(やはり5cm前後ある)もあるので一人では乗り降り出来ない人が出ます。少し足の不自由なお年寄りや、子供、視覚障害者にも危険です。車椅子は力のある人だけが自力で乗り降り出来るのです。駅には当然スロープ板が用意されていますが、階段昇降機と同じで事前に連絡してほしいとか言われて、利用しづらい物になっています。

 さて、琴似駅に着きました。この駅にもエレベーターがあります。ホームから改札口迄は何処も同じ様にホームの端にあります。しかし駅から地上へのエレベーターはどうして分かりづらい所にあるのでしょう。わざと使いづらくしている様に感じてしまうのです。でも今日は冬の街点検です、街へ出ましょう。
 琴似は地下鉄終点の駅ですから、街としても結構賑わっています。駅の直ぐ前には大きなスーパーや銀行などもありますが、歩道は殆どロードヒーティングされていません。車道の除雪は比較的に行き届いていますので此処では「かでる2・7」近辺とは逆に歩道と車道の段差が出来ています。今日は湿った雪ですから、車道も歩きづらく、琴似に来てからはほとんど一人で車椅子を漕ぐことが出来なくなりました。
 区役所・区民センターでは駐車場の除雪が日曜日のためか、ほとんどされていない、従って車椅子で建物まで行くのが大変でした。区民センターのロビーで一息入れて、取材の人達に色々インタビューを受けたりしました。この部分が放送されるといいのですが。
 区民センターを出てすぐ、排水溝の蓋(目皿、グレーチング)の隙間に車椅子のキャスターが嵌まってしまって、車椅子から落ちてしまった。車椅子の彼女はその隙間を分かっていてキャスター上げで乗り越えようとしたのに、雪のせいで自由がきかなくて乗り越える事が出来なく、転んでしまったのです。これなどは自動車と同じで冬道運転の難しさでしょうか。
 最後の点検箇所、市立身体障害者センターへと向かう。地下鉄二十四軒駅はセンターの最寄り駅なのでエレベーターが勿論ある。でもエレベーターの出口から歩道までロードヒーティングされているのだが、歩道が雪で10cm以上の段差が出来ていた。ここから身障者センターまではどうしても車椅子一人では行けない事が分かった。介助者一人で約300m位をキャスター上げの状態で車椅子を押すのは一苦労でした。
 せめてこの様に車椅子使用者が通る可能性の多い道くらいは除雪の徹底をしてほしいものです。何時も『交通権を考える連絡協議会』のメンバーは特に冬と言っても何事も無いように会議に集まってきます。でも、よく考えると彼らはみな車を運転して何処へでも行ける人達ばかりなのでした。
 車を運転出来なくても、街中の歩道がしっかりと除雪されていれば電動車椅子で出歩るける人もいるかも知れない。電動車椅子用のスタッドレスタイヤだってあるのですから。あるいは介助者が一人居れば楽に車椅子で出歩ける様になるでしょう。
 最終の集合場所である北海道難病センターへと向かう。地下鉄の最寄り駅である西11丁目駅にはエレベーターが無い。実際は車椅子の彼女が「かでる2・7」に車を置いてあったので一度かでるへ戻り車で難病連迄行ったので車椅子を持ち上げる事はしなくて済んだのですが、、。勿論車椅子でこの駅から難病連迄歩いたグループもいたわけで、階段はもとより当日の湿った雪の中、徒歩での約500mは大変だったことでしょう。

 今回の点検活動に参加してくれたボランティアの方々は18名にも及びました。社会福祉専門学校の学生さんが一番多く、社会人とだけ記した方、タクシーの運転手さん、そしてユニークな活動をされている「フォトボランティア“ポレポレ”」の方々。皆さんこれからの我が協議会の活動におおいなる力をお貸し願える人達と期待しています。
 また、参加者のうち1番目のコースの車椅子の方(女性)は通常タクシーを利用して職場(病院)まで通勤しています。2番目の方(女性)は車を自分で運転して職場へ通っています。3番目の方(男性)は雪の無い季節は電動車椅子で最寄りの地下鉄駅まで行き、地下鉄を利用して会議などに出席していますが、冬はボランティアさんの助けを借りてリフト付タクシーを利用して外出します。一人の介助では全ての公共交通機関を利用出来ないのが現状ですから。

★反省会

 各チームの責任者から簡単な報告と感想が述べられた。その後この場に居た皆さんの感想などを聞かせてもらいました。

◇さっぽろ駅の階段昇降機がもう少しスムーズに使えるとありがたいのですけど。
◇例えば交差点等で一人で行動する時はキャスター上げでなんとか渡るのですが、今日の様な天候では一人で行動するのは厳しいですね。また、西区役所の駐車場の状態も一人では心もとないと思います。
◇あと、マンホールの問題。雪が多い時は特に大変です。(注:雪が積もった路では地下を流れる下水の水温でマンホールの蓋の部分の雪だけが融けて、他の部分と大きな段差が出来る。札幌では歩道上にマンホールが沢山あって、狭い歩道では避けて通れない場合も多い)
◇一か所だけ良く整備されていても駄目で、全てが良くなっていく必要があると思う。切れ切れになった状態が多く目に付いた。
◇色々な設備も、果たして本当に使って欲しいと思って作られているのか疑問に感じました。ただ作れば、あればいいというのでは駄目だと思います。
◇今日初めて参加しました。普段気付かないで歩き過ぎていた所で、沢山の不便さがある事を気付かされました。
◇初めて参加して、私達には障害者の方の為の設備と分かるものでも、例えば、点字のプレートが付いていないために、使いたい人には伝わっていない事があるなど、驚きの連続でした。(今回初めてこの様なボランティアに参加したという人が多く同じ様な驚きの感想が多く述べられました
◇東区民センターの車椅子用のトイレの中に、大きな脚立が2台も置いてあって使用出来ない状態でした。
◇道立近代美術館の駐車場からは、一人では車椅子で行く事が出来ない。除雪が殆どされていない。美術館の裏手に多分職員用と思われる屋根付の駐車場があったが、そこを使えたら私達でも一人で美術館へ入れるのにと思いました。

★事務局長挨拶

 皆さん今日は悪天候の中大変御苦労様でした。雪が降って最初に除雪されるのが車道で、その雪が交差点や時には歩道にまで盛り上がるように残っていて、最悪の状態だったと思います。
 私達障害者は、どんどん社会参加の為に街へ出て行くべきだ、と言われています。夏ならなんとか出て行かれますが、冬は出たくても出て行けない訳です。最悪の場合命に係わる様な事態にもなるのです。
 行政は、例えば道路上のマンホールが障害者にとってどんなに危険なものかを知らないのかもしれない。又、雪の状態はその日の気温等によって変化が激しいから一様な対応は出来ませんが、私達がどういう状況に置かれているかを行政側に認識してもらい、出来る限りの対応をしてもらう。
 大雪が降ったからといって、家に閉じ籠もっていられない訳で、障害者も皆と同じく通勤や通院、買い物などで外に出なくてはならないのです。
 雪の上でも楽に移動できる車椅子の開発も必要でしょうし、関係機関に改善の要望を出していくことや、一般の人達に認識を深めてもらう事も必要だと思います。
 今日はボランティアさん18名、事務局9名で行なったわけですが、悪天候の中ボランティアの皆さんの助けが無ければ出来なかった事です。本当に御苦労様でした。
 これからもこの様な活動を続けて行かなければなりません。今後とも宜しくお願いいたします。

★副会長挨拶

 本当に皆さん御苦労さんでした。ホッとしました。皆さんの話を聞いていてつくづく思うんですけど、通れればいいとか、利用出来ればいいとか、ただそれだけではなくて、快適でなければいけない。嫌な思いをしたり、危険な状態でやっと通れたり、利用できたりでは駄目だと思うのです。
 それから、点検も本当に酷い災害の時はどうかとか、豪雪の時は、春先の雪解けの時はどうかという様に、それぞれの時、状況の対応・マニュアルが準備されているのが本当だと思います。その為に点検も幅広く、色々な時にやる必要があると思います。今日は本当に御苦労様でした。

★点検票を観ての感想

 雪路の点検と言うことで、言わすもがなの事なのか除雪に対する感想が余り書き込まれていなかった。しかし冬の歩道は車椅子はおろか健康な大人だってまともには歩けないほど除雪が不完全です。歩道の除雪がまったっく成されていない所さえ沢山あるのですから。いわゆる生活道路と呼ばれる幅の狭い道路では車しか通れないのが現状です。歩行者の事すら考えられていないのですから、まして車椅子のことなど、とうてい考慮の外でしょうね。
 点検票の記入をボランティアの人達にお願いしたので、特にこのようなことを初めて体験する人が多かったせいか、(新鮮な感動?が書かれていて)設備面の不備に目が行ったようです。トイレの洗面台が高すぎる。エレベーターが狭い。駅の窓口の高さが高すぎる。地下鉄の車椅子用のスペースが一編成に一箇所しかない(理由は不明)。スペースも狭い、などなどです。今まで何度も指摘してきた事ですがなかなか改善されないことですね。
 最後の副会長挨拶にあった通り、色々な時・状況で点検を続けなければいけないということで、今後とも皆さんの御協力をお願いして報告を締め括りたいと思います。(完)


○HOME ○目次へ