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交通権を考える連絡協議会

会報第1号

(1993年5月発行)

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交通アクセスについて



交通権を考える連絡協議会
 会長 曽 我  則 明



 早いもので、全ての障害者の熱い願いに答えるべく、創立した「交通権を考える連絡協議会」も1年を迎えようとしている。
 私自身も、この会に入り、自分の障害と交通が社会自立のために、あらためて、重要であることに認識を新たにしているところであります。
 今日までどの国も健常者の動きを中心にした都市づくり、何年も続いて来た。1970年代から「障害を持つ全ての人々が自由に動きまわれる都市」を、いかに創っていくかの努力が少しずつ活動されて来た。しかし依然として、私たちの自由な移動は、特定の地区や特定の交通手段に限られている本当に「自由に動きまわれる都市」創りを真剣に考え、そして変えていくかが問題です。そして現代の交通対策がどこまで到達したか、そして何が問題なのかを考えなければならない。
 障害を持つ人は今まで施設のうえに衣食住といった施設中心型の施策で進んで来た。障害者みずからも、地域で生活できることを第一と考え地域の都市を、その施設を自分の力で自由に使えるようにと交通対策を考えるように変わって来た。人権を守るという立場から、町田市などは古くから障害者の生活圏拡大運動が進められている。基本的には日本の交通対策は「福祉のまちづくり」から始まったといってよい。
 前文で話したように障害者や高齢者の交通対策は、当初はきわめて小規模であった。どこかでその障害者が困っていればといった自然発生的なものが多く、その対策は、福祉とか建設とかで波及して来て、その障害者の個人に目をあてられた対策になっていたから、部分的な対応しかできなかった。交通施策の総合性はまさしく今後の私たちの運動にかかっている。
 現在、交通領域の対策も、エレベーターの設置やリフト付きバス等、全国で部分的な展開をしているが、交通のネットワークバリアをめぐらすには、ほど遠いものなのか?この会でも、設立当初から、全ての交通のアクセスを点検し、各機関への要望書の提出とアンケート調査などを行って来ている等、各交通機関では、少なからず会の動きに注目せざるを得ない状況にあると思う。
 福祉のまちづくり、における交通の動きは、「衣・食・住・交」と付くぐらい大切なものであります。地下鉄については、政令指定都市や大都市がエレベーターの設置をし、バスには(東京都等)リフト、スロープを付いた等、私達の運動が少しづつ実り、必要性を感じた取り組みとなって来ている。
 また交通対策の中で、障害者や高齢者等利用者の経済的補助対策や物理的対策等の改善がクローズアップされてくる。鉄道割引、地下鉄、バス等のパス化、それに福祉タクシー等は、一定の補助制度はあるが、民間運営のリフト付きタクシーについては大きな課題である。
 車イスのあり方も、現在では相当変化し電動車イスもある。その場合、折たたみはきかないので車イスごと入る車輌が必要となってくる。それがリフト付きタクシーではないだろうか。介護手当てを入れてちょっと都心まで行くと、1回往復で一万円もかかってしまう。少しのお金をためておいてその交通費にあてると云います。
 これからも、この交通権を守る会の役割は大きく、交通権を守る事は町づくりをしていくことでもあるということを重視して、全ての障害者が自由に自分一人でどこへでも行ける交通の町づくりを目指して活動して行きたい。


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『誰もが利用しやすい交通機関に!』

アンケート調査 結果報告&要望書

交通会社への要望提出状況と成果

 交通機関を利用した時にどのような不便を感じているのかを知るために障害者を対象にアンケート調査を実施して、各交通会社および札幌交通局にその意見を取りまとめた要望書を提出しました。昨年12月9日の障害者の日に交通権会員12名がJR北海道に対して要望書を提出し、一定の前進はありましたが、職員の増員、エレベーターの設置、駅舎にトイレ設置など経費が掛かるものについては、大幅な改築がないかぎり無理との返事でしたが、函館駅が現在改築中、札幌―函館間を3時間で走っている振り子気動車には車椅子優先席として、多目的部屋やトイレ、洗面書をもうけ乗降口も広く、インフォメーションをつける、券販機の展示についても無人駅を除く全道すべての駅に設置、星置駅の駅員の対応も改善されるなどの成果もありました。しかし、文書回答の要求は会社の方針との理由で拒否され、話し合いの場からマスコミを締め出す姿勢といいJR北海道の閉鎖性が現れました。
 他にハイヤー協会、JAL、ANN、JAS、北海道空港(株)、札幌市交通局(地下鉄)中央バス、道南バス、じょうてつバス、JRバス、札幌交通局(バス)に要望書を提出し、中でもJALでは職員の手話講習の実施、サービスハンドブックを作成し、職員に対する教育を図っているなどの回答。札幌市交通局はリフト付きバスの導入は積雪寒冷地域であり条件的に難しい問題もあるが、実施都市の意見を聞く等調査研究を進めたいとの回答。北海道空港(株)では到着出口の車道と歩道の段差に4箇所にスロープ(幅180、長さ240、勾配1/12)を設置するなどの回答がありました。
 要望書提出により改善されたものを簡単に書きましたが、交通権が発足して1年足らずですが、やはり少しづつでも運動をしていくことにより変化が生まれ、その積み重ねがより大きな変化を作り上げて行くんだと言う事が僅かな期間の交通権活動の経験ですけれど、窺うことが出来るのではないかと思います。
 今後、要望書提出に関しては要望内容の充実、要望書の提出の仕方など改善しなければならない点が多くありますが、今回の経験を生かし、誰でもが利用できる交通機関をつくるため皆さんと一緒に頑張って行きたいと考えております。

(宮下 高)



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アンケート調査報告

 当会は、発足l年の集大成として、咋年より当会関係団体と、個人を対象にした「誰もが利用しやすい交通機関に!アンケート調査」を行ってきました。
 当会内外より 名の方々から同答が寄せられました。(中には点字の図解での回答もありました)
 咋年12月9日の障害者の日に、JR分のみまとめてマスコミ発表もし、同時に結果をもとにJR交渉も行いました。更に、バス・地下鉄・飛行機など各会社毎にまとめ、それぞれに要望書を作成して、3月から4月にかけて会長、事務局長を先頭にして、要望書を渡しながら懇談を行い、文書による回答を求めました。
 その結果、JRを除く全ての会社から前向きな回答と共に、文書による回答が約東されましだ。
 以下、紙面の都合で詳細にわたってご報告できませんが、資料を掲載しますのでご覧下さい。

(三島)

グラフ1障害別回答
グラフ2年代別回答
グラフ3交通機関別回答

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「あるできごと」
「ラッシュ時には利用しないで」・・・星置駅の場合
 

交通権を考える連緒協議会事務局

 昨年(1992年)11月、車いすを使っている人がJR駅を利用したら「ラッシュ時には利用しないように」と駅員に言われたと相談を受けました。その内容について簡単に報告します。
 1. Nさんより事務局長への電話-「千歳からJR線に乗って星置駅で降りたら、駅員さんから『ラッシュ時には車いすの人の階段の登降り手助けする人がいない』と言われた。『Kセンター(Nさんが通っている施設の名前)と話し合い、ラッシュ時には利用しないことになっている』と説教をするように言われた。」
 2. 宮下事務局長の星置駅への間い合わせに対する答え---「そういう事実はあった。しかし人がいないので対応しようがない」「付き添いをつれて乗ってほしい。運賃割引もあるから」「ひとつの駅だけではどうしようもない」別の方からも、星置駅で苦情を言われたという連絡があった
 3. Fさんの話---「札幌駅で乗るときには、星置駅の方に連絡を人れておく、ということだった。しかし、いざ星置駅で降りようとすると、『電動車いすとは聞いていない。重たくて上げられない』と、説教調で苦言を言われた」
 4.Kセンターを訪ねて--宮下事務局長はNさんと会った後、施設長に問い合わせた。「時間帯によっては乗らないようにと、強制ではないが、言ってある」ということであった。
 5.JRへの電話 電話で改善を申入れると、JRは事実は認め謝罪をしたが、具体的な改善はとくに示されなかった。JRへの要望書提出の際にも改善はするという回答であったが、人員配置等具体策についての答えはなかった。
その後…「星置駅では応対が良くなった」とNさん。

■コメント

(交通権事務局)

 星置駅は近隣に障害を待つ人の施設がいくつかあり、車いす利用者の駅利用の頻度は、やや高いと思われる。利用者が多いことがわかっているのだから、JRなどの交通機関ではむしろ改善策はとりやすいのではないだろうか。施設の改造や人手の確保は優先的に行わなければならないのではないだろうか。
 今回の間い合わせに対して事務局としては、組織的に取り上げたりということではなかったが、とにかく苦情に応えるためにJRや施設に問い合わせ、申し人れをした。今回のことについては、明確な答えはないが応対についての改善はされているようだ。
 交通機関や、公共施設等の一部で障告を持つ人が利用しやすく改善が見られるのも確がだが、今回のように利用を拒まれるこ一ごが普通に行われているとも思う。そのほとんどは改善を求めることもできすに、誰にも伝えられずに終っている。そして結果としては障害を持つ人が通動が困難になったり、家にとじこめられたりということになる。
 事務局としてできるだけ苦情に応じたり、利用できる交通機関や公共施設等
についての情報提供を行っていきたいと考えている。ぜひいっしょに取り組ん
でほしい。



「こ え」
肢体不自由者訓練センター
中沢 瑞希

 障害者は、どうしても室内に閉じ込もってしまいます。人に迷惑をかけたらいけないとか、施設にいたらそう思う人が多いのです。自分の楽しみ方を知らないのでしょう。
 私も3年前はそうだったと思います。タクシーにしか乗れませんでした。それが初めて一人でJRを利用して家に帰りました。星置発千歳行きのJRに乗りました。不安と嬉しさで、なんとも言えない気持ちでした。今思うと何でそんな事と思います。
 でもこの一つがあったから、今がたのしいのです。
 人間と言うものは、一つ出来たらあれも出来るかもしれない、これも出来るかもしれないと、どんどん欲がわいてくろものです。それを誰かの一言でせっかくの勇気を失う人が障害者でも健常者でも多かれ少なかれいると思います。
 これからは、各駅の駅員さんはだんだん減少していくと思いますが、障害者はどんどん駅を利用する人が増えてくるのではないかと期待しています。
 駅だけではなく、何に対してもそうだと思います。施設に対してもいい、白分の家に対してもいい、自分の存在する全てのものに、人一人の権利があるのではないでしょうか?、だから施設の中では、職員の義務、入所者の権利の尊重で衝突するのだなぁ〜と、いつも思っています。
 私も、こういう事は本当に難しい間題だと思います。施設だからしょうがないと言えばそこまでです。施設にはこれがつきものかもしれませんネ。
 でも、人間が人間として自立していくには、色々な事を経験していくことが大切だと思います。


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交通アドバイザー制度について

我妻 武

 交通アドバイザーとは運論省が1992(H4)年度に設置したもので、交通機関利用者のサーピス向上を図ることを目的に利用者の代表として全国ブロック(運輸省管別)80人が委託されている。道内は北海道運輸局が所管し、会社員や学生、主婦、高齢者や身障者の8人のアドバイザーが昨年12月3日に初会議を持ち、多岐に渡る意見交換を行なった。このアドバイザー会議は年2回行なわれ、交通機関利用者の利便増進につなげるという重要な役割を持っている。
 いつでも、どこでも、誰でもが利用できる公共交通についての意見交換が行なわれ、かく言う筆者もアドバイザーの一人として、少しでも障害を持つ人々の置かれている交通状況について、改善を含めて訴えていきたいと思っている。
 ご存知の方も多いでしょうけれども、運輸行政としても高齢者や身障者に対する取り組み(主にハード面)がいくつかあるのでご紹介したい。


●鉄道駅におけるエスカレーターの整備指針(H3年)

概略
1.新設・大改良する駅・・・・1日当たりの乗降客が五千人以上の駅から重点的に設置が望ましい。
2.既設駅・・・・可能な限りに早期実施。10年以内を整備目標。
 その他、公共交通ターミナルにおけるガイドライン(S57年)や車両構造に聞するモデルデザイン(H1年)や交通技術の研究・調査や交通体系の整備についても調査・検討が行なわれているが、これら指針の実行は実際に電車やバス等を運行する交通事業者にゆだねられている。
 早期に実現させるには、やはり利用する我々が声をあげなければならないと痛感するこの頃である。



かいらんばん
車いすでええ湯だねぁ−?

十勝清水町の車いすで入浴できる温泉構想
 十勝管内清水町役場では、同町の北熊牛地区に建設を予定している温泉施設の基本権想をまとめたが、お年寄りや足の不白由な人の利用を配慮した設計の導人の他、全国でも珍しい、車いすでもお風呂に入れるようなリフト付き専用浴槽の設置計画を盛り込んだ。
 当初、大宴会場や遊興施設などの案があったが、地元関係業や住民との議論の中で、地域に根付いた施設のありかたが検討されていた。1月には基本設計をまとめ、本年度に一部着工、平成6年3月に完成予定。
■連絡先清水町役場(〒089-01)清水町南4条2丁目2 Tel01566-2-5115
★ぜひ、ぜひ利用者の声をとりいれてほしいもの。作ったはいいが使えない・とても使いづらいという例をこれ以上ぶやさないで。

自動販売機で切符を買えるように

JR北海道が4月から乗車券発売を実施

 JR北海道は、この4月12日から道内の自動券売機を設置する全駅で障害者用の乗車券を自動券売機で販売することになった。昨年4月から、小博、岩見沢、干歳、石狩当別の札幌近郊の各駅で、試行的に実施していたが、その結果を踏まえて全駅で実施することになったもの。
 対象は第1種身体障害者と第1神精神薄弱者の方が介護人とともに乗車する場合で、自動券売機の「小人用」の券を買う方法。改札の際に、身障手帳を見せ、乗車券に認めのスクンプを押す。
 緑の窓口での取り扱いはいままでどおりだが、すこしでもJRを利用しやすいようにという配慮。
 ただ、障害者の単独旅行の時には利用できないなど課題は残されている。なお、JR北海道では、札幌〜函館間のリゾート列車に、車いす配慮用の車両を導入することを決定するなど、今後、障害者に「やさしい旅行」ヘ、少しずつ動き出している。
■連絡先 JR北海道・営業部企画課 運賃・制度係
(札幌市北区北5条西4丁目 Tel 011-221-5150)
★JRさんが遅ればせとはいえ、設置してくれました。しかし、障害を持つ人が一人で旅行するのは普通のことだと何故思えないんでしょうかね〜

利用できる全国の交通機関などが一目瞭然

旅行のソフト化を進める会がガイドプツクを作成

 全国のホテル・旅館、交通機関等についての情報をまとめたガイドブックが作成された。車いすガイドブックはこれまでにも作成されたことはあるか、全国から情報を改めて収集し、このように網羅的で実用的な内容のガイドブックは初めて。
■連絡先 旅行のソフト化を進める会
(Tel 0426-42-5617 東京・第一若駒の家内)


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障害者に関する新北海道行動計画内容

 昭和56年から、「完全参加と平等」をテーマに国際障害者年が始まり、北海道においても昭和57年から平成4年度までの10年間に「障害者に関する北海道行動計画」を策定し、障害者の総合的施策を推進ました。
 この行動計画推進の成果には障害者自身、関係機関などにより賛否両論があるのも事実です。道の行動計画の実績報告書に象徴されるように、「この10年間、目的の達成のために施策の総合的な推進を図ってきたところであり、多くの分野において障害者対策の前進があった」との評価と「障害者雇用率の低迷と障害児の高等進学の狭き門や交通の問題など、中には道の及ばないものもあるとは言え、障害者が生きていくための基本的な問題がいっこうに進んでいない。そのうえ臨調・行革により、福祉予算が削られ、10年でこの程度しか進まないのか」とさまざまです。
 道でこれまでの行動計画が平成4年で終了したのにともない、これまでの行動計画の理念を受け継ぎ、全道の各地域で「総合リハビリーティションシステム」を具体的に推進していくための計画として「障害者に関する新北海道行動計画」を発表しました。
 この事業を進めるための推進体制として行政、関係機関、団体、企業、道民などの参画による「北海道総合リハビリーティションシステム推進協議会」の設置、庁内の「総合リハビリーティションシステム推進議会」の充実強化とともに、支庁段階、市町村段階にも推進会議の設置をしていく考えです。以下その要約を掲載します。
 内容を見て分かるように、広範囲かつ充実した内容になっておりますが、この新計画を生かすも、殺すも交通権や障害者自身の行政および民間・企業への積極的な働き掛けに掛かっており、新計画の内容を学習し、活用することが新計画をより現実のものに近付けていくことになります。

第1部 計画の性格

1.計画策定の趣旨
 この10年間の実績については行動計画の実績報告書としてまとめ、目的達成のために施策の総合的な推進を図り、多くの分野で障害者対策の前進があったとしながら、今日、障害者の地域での自立した生活を実現するための一層の取り組みが求められており、施策や関係する人々、制度や資源などを結び付けた総合的サービスの提供など、今後の課題も多い。障害者の自立の意識の高まり、高齢化の進行、地方の過疎化、障害者を取り巻く状況や二−ズの変化など、障害者対策を推進する上で新たな状況が生まれており、前行動計画を引き継ぐ「障害者に関する新北海道行動計画」(以下「新計画」という)を策定する。

2.計画の位置づけ
 新計画は「北海道新社会福祉長期計画」を基礎としてご21世紀へ向けての長期展望のもとに、北海道のあるべき今後の総合的な障害者対策の方向と主要施策をしめすもの。国に対しては計画推進に必要な財政措置や制度の改善などの要望となるものであり、市町村、関係機関・団体・企業及ぴ道民などに対しては、この計画に沿った取り組みを期待している。

3計画の期間
 平成五年度から平成十四年度の十年間を計画期間とする。

第2部 計画の基本的な考え方

1.障害者対策の基本的目標
   (ノーマーライゼイションの実現)
 前計画における「障害者を社会から締め出すことなく、健常者と同等にその基本的権利が保障され、障害者と健常者が共に生活できる社会こそ正常な社会である」というノーマライゼイションの考え方は、新計画に引き継がれる基本的な目標であると位置づけ、ノーマライゼイションの考え方における基本的な権利とは、何人も侵すことのできない、国民一人ひとりに保障された自由と平等を柱とする権利とし、障害者にとって当然これまで保障されていたこの基本的人権が、今日改めて、本当に障害者に保障されているのかという重い問いかけがなされているとしています。
 また、公共的施設などの福祉環境や公共交通機関の整備などは遅れており、誰もが生活できる地域づくりのために整備すべく条件は多い、真に豊かな社会とは、最低限、「あたりまえの生活」が誰にでも保障される社会であり、障害者対策はその入り口において取り組まれるべきであると結んでいる。

2.障害者対策の基本的な考え方
 (総合リハビリテーションシステムの構築)
 北海道地方心身障害者対策協議会で「北海道における総合リハビリテーションシステムのあり方について」の報告を受け、自立について「日常生活に他人の手を借りようとも、自らの判断と決定により主体的に行動し、その行動に責任を負うことが出来るのであれば、そこには自立がある」との考え方に立ち、また、リハビリテーションの対象である「障害」は、非固定的かつ重層的にとらえるのが一般的であり、障害の一次レベルとしての「機能・形態的障害」、二次レベルとしての「能力障害」、三次的レベルの「社会的不利」のいずれかを、またはいくつかを合せ持った状態として考えるべきとしている。
 総合リハビリテーションシステムとは「障害のある人が、地域の中で自立した生活が出来るよう、福祉、保健、医療、教育、労働などの関連する分野が密接な連携を保ちながら、ライフサイクルの段階で障害者が(乳幼児期、学齢期、青・壮年期、高齢期)において、また、各段階を通じて、必要なサービスが有機的に、体系的に提供されるような仕組み」のことであり、現在のサービス提供体制に障害者を適合させるのではなく、一人一人の障害者の状況、二−ズに合わせて柔軟に、かつ機動的に対応できるサービス提供体制を築こうとするものである。

3.計画における4つの目標
 @障害者対策の総合的推進体制の整備
 総合リハビリテーションシステムは福祉、保健、医療、教育、労働など関連分野の密接な連携の中で、障害者のライフサイクルを通じて分野を越えた業際的な援助体制を整備することから、全道域の推進体制を充実する。障害者本人及ぴ当事者団体の意見の尊重や主体的参加を進めていく。地域に根ざした援助体制として整備される必要がある事から、市町村における推進体制の設置が必要である。

 Aライフサイクルを通じた援助体制の整備
 障害者に対するサービスは、開係法に基づく専門の機関や施設等の連携を十分に図り、障害の特性や援助を必要とする時期などに応じて、きめ細く提供される必要がある。このようなことから、障害者の個々の二−ズや障害特性に対応したサービスが提供されるよう、サービス内容や相談活動等について、広域的な調整・連携体制や専門的な支援体制を整備するとともに、身近な市町村において障害者の立場に立った援助体制を整備することが重要である。

 Bライフサイクルにおける個別システムの確立
 人生において、固有の課題を有する乳幼児期、学齢期、青・壮年期、高齢期の各段階ごとに、それぞれの課題に応じた個別システムの構築を図る。また、障害の種類、程度によっても必要とされるサービスが異なることから、可能な限り、障害特性に応じた個別システムの確立を図る必要がある。

 C地域生活の基盤整備
 地域において自立した生活を可能とするために、推進体制や援助体制の整備に加えて、ライフサイクルに共通したハード、ソフト両面での基盤整備が必要である。このため、道民への普及啓発、地域福祉活動など広く住民の参加による施策の推進、福祉環境、交通手段、福祉機器、移動・住宅などの整備促進、マンパワーの養成などについて取り組む必要

第三部施乗の方向と主要施策

 施策の方向と主要施策は4つの目標ごとにたてられ、その体系は下表(7頁)のとおりである。

(宮下)

(7ページ)
施策の方向と主要施策
【目   標】【施 策 の 方 向】【主 要 施 策】
1.障害者対策の総合
  的推進体制の整備
●北海道の推進体制

●市町村の推進体制障害者の
 参加の拡大

・全道的な推進
・道庁内の総合的な推進体制
・障害者の意見の反映
・障害者関係団体の活動の促進
・障害者の主体的活動の促進
2.ライフサイクルを
  通じた援助体制の
  整備
●全道域での援助体制

●地域における援助体制

●サービス提供施設等の整備・充
 実


●サービス提供機関倒の連帯
・相談機関等の充実、広域的な調
 整
・道立施設等の専門的機能の活用
・相談窓口の一元化
・地域におけるケースマネジメン
 ト
・圏域区分に配慮した施設・マン
 パワー等の配置
・社会福祉施設の整備
・保険・医療機関の整備
・複合的拠点のせいび
3.ライフサイクルに
  おける個別システム
  の確立
●乳幼児期のシステム

●学齢期のシステム

●青・壮年期のシステム

●障害特性に配慮したシステム

・早期発見の充実
・早期養育の充実
・家族への支援
・障害に配慮した教育の充実
・交流教育等の推進
・就学・地域生活の支援
・自立した生活への支援
・就学の促進
・社会参加の機会拡大
・地域での生活の支援
・保健・医療と福祉の包括的支援
 体制の整備
・中途障害者へのリバビリテーシ
 ョンシステムサービス
・障害特性に配慮した体系的なサ
 ービス提供
4.地域生活の基盤整備●理解と交流の拡大

●地域福祉活動の促進

●住宅等の整備

●福祉環境の整備

●移動・交通手段の確保

●情報・通信の確保

●福祉機器の普及、研究・開発

●所得保障、経済的支援

●マンパワーの確保・養成

・道民に対する普及啓発
・福祉教育の推進
・不適当用語の是正
・障害者との交流機会の拡大
・ボランティア活動の促進
・社会福祉協議会等の充実
・民生委員児童委員・各種相談員
 活動の充実
・公営住宅等の整備
・ケア付住宅等の整備
・高齢者・障害者向住宅の整備
・福祉環境整備要項等の普及
・福祉環境整備の促進
・配慮の行き届いた整備の促進
・道立施設の整備
・公共交通機関の整備促進
・道路付帯施設等の整備促進
・特別な移送手段の確保
・観光へのアクセス
・情報システムの整備
・多様な情報の提供
・障害特性に配慮した情報サービ
 ス
・情報提供・相談活動の充実
・給付・貸与制度の整備
・研究・開発への支援
・民間サービスの育成・振興
・年金・各種手当制度等の充実
・各種給付等事業の充実
・福祉マンパワーの確保・養成
・医療従事者の確保・養成
・市町村の専門職員の確保・養成
・職員の待遇改善


(8ページ)

使える!? 使えない!! コーナー

のりもの・しせつ・たてもの

 国際障害者年10年の終りと引き換えに生れた様な「交通権を考える連絡協議会」もおかげ様で発足1年を迎えるに当たり、今の社会の体質が施設整備の面を通して、どう変わって来ているのがを少し観てみようと思います。札幌市とその近郊の町を対象に観ますと、外で見かける障害者の数が10年前に比べて確かに多くなってきているのは事実でしょう。これは、裏を返せば障害を待った方々にとって、少しずつですが外出しやすくなった環境面とそれに加えて障害者自身が外へ出て行くという勇気を持った表われたと思うのです。
 しかし、自家用車に乗った障害者の数がグーンと増えてはいるものの、その反面公共の乗り物はというと、残念ながら北海道では民営はもちろん市営の路線バスのリフト付きは全く有りませんし、地下鉄さえも未だにエレベーターのないところも数多く、JRも同様で現在何本か乗り易い列車が生れつつありますが、今後の見通しについての要請に対しても一切返答は頂けず、星置駅に於ての障害者乗降時間の差別間題、各駅のなが〜い階段の間題や駅や列車内のトイレの間題など、本当の意味で『誰でもが使いやすい交通機関』という状態になるには、まだまたと言ったところです。
 それに比べ航空機関の面では、JAL(日本航空)のボーイング767と747型機には、車椅子用トイレが完備され、機内専用の析りたたみ式の車椅子での移動が可能となっていますし、職員全員に障害者対応のサービス・ハンドブックを持たせて、介護の徹底を計っています。
 飲食店関係では、我々の会でも時々利用する中華料理の鹿鳴春(南3西3)は、身障トイレは無いのですが結構使いやすい、そして美味しいと言う反面、先日初めて入ってみたが、『かに将軍』という所は、車椅子と見ただけで完全に門前払い(内心、何が将軍だサービスは足軽以下じやないの)という店が今でも有るのが現状で、YESそうご(南2西3)の地下から商店街に抜ける通りも階段の山。もう一度地上に出て、他に入るところを探す始末。こういった所は結構いたるところに有り、知っておかなくてはなりません。特に電動車椅子の方は計算外でバッテリー切れの為、立往生と言ったこともありがちです。
 次にトイレまで完璧な店としては、キャバレー・工ンペラー(南4西2)、焼肉の花郎(ふぁらん・白石平和通り1)、ミス・ジャメイカ(南3西6)、ろいず珈琲館円山(南3西24)、ティファニー(センチュリー・ローヤル2F)などが有名、広島町ではレストラン,コステンハイム(新富町西3の1)と言う所が表に大きな車椅子看板を掲げていますし、恵庭市ではスナック21世紀が車椅子で利用されるお客様の為にと、改装して下さり入口がひろ〜くなりました。
 同じく恵庭のサッポロピール園工場は、最新式の身障者用エスカレーターが設置されては有るのですが、専用の一台しか無い車椅子に乗り移らされ自分のは担いで登るという少々頭を傾げる作品で、費用は相当掛けただろうに実際にそれを使う者の真意が届いていない、もったいなく残念な所もあります。
 昨年、障害者の点検旅行を初めて企画・主催された、レジャー・サービス労連さんでは敢えてこういった間題に取り組んで下さり、大変さを知った上でも尚仕且今後も協力し、進めて行きたいと言って下さり、その閣係の中から更に人を通しで話は発展し、穂別町では町をあげてのご協力で、障害者用のバンガローが一度に3棟も完成し、トイレも設置され今年からキャンプが可能になりました。また、近々改装を予定されている厚生年金会館では、すでに交通権でも昨年館内の点検をさせて頂き、宿泊面ではハンディ,ルーム設置や3F宴会場のトイレの設置についても前向きな返答を頂きました。
 白石区には専用車椅子や個室更衣室、シャワーを備えたプ一ルが咋年の12月に完成、十勝の清水町では、平成6年4月に『車椅子でも入浴がらくらく』と言う謳い文句の温泉が完成の予定です。
 これらはほんの一例ですが、こうして観てみますと、使いやすくなっている施設や店の中には、個々の障害者が不自由さの中で知り得た人々との交流の中から生れたものも多く見受けられ、必ずや『ギブ・アンド・テイク』の関係も存在していることに気付かされます。今の使い勝手の悪い社会構造にめげずに、どんどん入り込んで、心のふれあいの中で使いやすいものを得て行くと言うのも案外手っ取り早い一つの方法とも思われます。
 今後、交通権では公共の交通機関を使った旅行等も計画中ですが、色々な所を皆でどんどん利用して行き、誰でもが使いやすい交通機関や施設建設のために娘張りましょう。(事務局 水島 明)



『編集後記』

★気がつけば、交通権ができて早1年となりました。ところが記録が残っていない!こういうときだからこそ、事務局等の活動をいっしょに盛り上げてくれる方を心より募集しています。
  (私にはなにも出米ないなんて言わせないゾ!!)
★白分達の生きている間に変わらないんじやないかな〜」と、交通の話になと、どこか遠い話のように思えてしまう今日このごろ。
  (それを跳ね返すくらいのエネルギ−が欲しいよ!!)
★役所ては階段しかなかったら持ち上げてもらえばいい。しかし、レストランンや居酒屋やレジャー施設、スポーツ施設などは楽しみにいくのだか、ぜひ楽に使えるようにというのは我らの願い
   (何とかなるだけてはホントのアクセス権しゃな−い!!)
●♂♀と行くんだったらなおさら、一人で利用できるような施設てあるべき。私たちは友人に負担をかけたくない。
   (うう−ん、何と答えるぺきやら…悩んでしまう)
★働くために絶対欠かせないのも交通です。一般全業の採用には「自力で通勤できること」という条件が必す付きます。通勤できればあと何倍かの障害者は仕事がてきています。
   (だれもが自力で利用てきる交通機関……そこには障害はない!!)
★編集担当では、「使える施設・使えない施設」についての情報を募集しています。各地に通勤や旅行、外出の際にこんな施設が使えた・使えなくて驚いたという情報をせひお寄せくたさい。使えるところは多くの方に紹介し、使えない施設には改善を求めて働きかけていきます。こそういう声が集まることが、ひとつづつ環境を改善し、ひとりづつ障害を持つ人の権利についての理解者を増やしていくことになりましょう。
   (え−い面倒だ!まとめでかかってこい)(T)


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