第2章 災害発生時の対応

 災害が発生した場合、住民は混乱しパニック状態に陥ります。このため、民に正確な情報を伝達し、的確かつ安全に避難誘導することが非常に大切です。
 正確な情報の把握と伝達は、その後の応急救助を円滑に行う上からも重要になります。
 また、避難した後の安否確認や避難所の設置など、市町村においても混乱の中とはいえ、冷静迅速に対処し、住民に安心感を与えることが必要となります。

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 1 情報の伝達
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 災害発生時において、情報の把握はその後の応急救助を行う上で非常に重要になります。このため、被災市町村では被害の状況を的確かつ迅速に把握し、被災者や関係機関に伝達することが必要です。
 災害の規模に関わらず、防災関係機関への通報を正確に行うことにより、その後の被害を最小限にすることができます。
 このため、市町村における伝達手段については、防災無線や衛星通信ネットワークなどあらゆる手段を最大限に活用することができるよう、あらかじめ確保しておくことが必要となります。
 また、被災者にとっては、通信手段が寸断され正確な情報を入手することが困難になることから、誤った情報が住民の問に伝わり、混乱を大きくすることが十分予想されます。
 このようなことを想定して、市町村は被災者に対しても正確迅速に情報を伝達するため、防災放送や広報車をはじめ、ラジオ、テレビ、新聞などのマスコミを活用するほか、避難所などに掲示場所を設けるなど、あらゆる手段により情報提供することが必要です。

@ 災害弱者に対する情報伝達

 災害弱者には情報が伝達されにくいことにも配慮する必要があります。特に、聴覚障害者に対してはファクシミリ、手話通訳や文字放送など、また、視覚障書者に対しては点字・音声などによる情報伝達を行うことが必要です。
 被災地に外国人が居住している場合は、外国語による情報提供に配慮し、通訳を配置するなど可能な限りの手段を活用することも必要となります。

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 2 災客弱者の避難誘導と安否確認
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 災害が発生した場合、自力で避難することができない災害弱者を支援・誘導し、避難所へ避難させることが必要です。さらに、避難後は、避難できないまま自宅にとどまっている人がいないか、避難所における災害弱者の被災状況はどうなっているかについて早急に把握しなければなりません。
 このためには、市町村における平常時からの災害弱者の把握が重要となり、民生委員・児童委員の協力などによりあらかじめ把握しておき、被災後はこれらをもとに安否の確認を早急に行います。さらに、援護を要する場合には、早急に保健医療福祉サービスの提供ができるよう関係機関などに連絡することが必要です。
 このように、第1章の「3 避難誘導体制の整備」の「A 災害弱者の避難誘導」でも述べた方法により、災害弱者の避難状況を十分に把握し、それを集約する仕組みや、避難していない災害弱者がいた場合における安否確認・避難誘導体制を市町村で整備しておくことが、災害発生直後に適切に対応する上で重要なポイントです。

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 3 避難所の設置
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 災害発生後、被災者が当面生活するのは避難所となります。避難所には、子どもから高齢者まで、ひとり暮らしの人から大家族まで、さまざまな人たちが生活を共にするこになります。
 このため、避難所の選定に当たっては、あらゆる人にとって生活しやすい施設としての整備が必要となります。

@ 避難所の設置

 市町村が避難所を設置する際には、できる限り物理的障壁の除去(バリアフリー化)された施設を選定する必要があります。物理的障壁の除去(バリアフリー化)されていない施設を避難所にしなければならない場合には、災害弱者に配慮して、障害者用トイレを設置したり、入り口などにスロープなどの段差解消のための設備を備えるなどの配慮が必要です。
 また、災害弱者のための避難所として、あらかじめ社会福祉施設などを指定しておき、これらの施設には避難した際に必要な設備や備品などを整備しておくことについても検討しておくことが必要です。

A 避難所の管理運営体制の確立

 各避難所には、避難所を維持・管理するため、原則として市町村職員を管理責任者として配置します。管理責任者がいない場合、被災者の状況把握が遅れ、そのことにより食料や水などの物資の供給が滞ったり、保健医療福祉サービスを必要とする人への支援が円滑に行われなくなるなどの事態を引き起こすことも考えられます。
 このため、避難所の管理責任者は、各避難所における被災者の人数、世帯構成、被害状況、援護が必要な人を早急に把握し、被災者台帳を整備することが重要です。

B 保健医療福祉サー・ビスの早期提供

 さらに、この被災者台帳に基づき、被災者のニーズ把握に努めることが必要です。特に、災害弱者については、保健・医療・福祉面でのニーズを十分に把握し、これまでに受けていたサービスを継続して受けられるよう、また、新たなニーズに対しても早急にサービス提供につなげることができるよう、関係機関に連絡・調整するなどの迅速な対応が求められます。
 このように、避難所の管理責任者は、被災者の理解と協力のもと、ボランティアなどの協力も得ながら円滑に運営することが必要です。
 災害弱者の中には、被災前にさまざまな保健医療福祉サービスの提供を受けていた人が多いと思われます。このため、これらの人たちが避難所で生活を続けていく場合には多くの不便を感じることとなります。したがって、管理責任者などによるニーズ把握のほかに、災害弱者からの相談を直接受け付ける窓口を避難所や近隣に設置するなどの配慮も重要となります。
 また、地元医師会などの協力のもとに避難所に救護所を設けるなど診療体制を整えておくことも必要です。

C 避難所の生活環境への配慮

 避難所を設置した場合には、毛布や布団、日用品、テレビ、扇風機(夏期)、暖房器具(冬期)や仮設トイレなど生活に密着したものが必要となります。
 さらに、災害の規模が大きい場合、避難所での生活が長期間に及ぶこともありえますが、このような場合には、入浴設備の配置やプライバシー確保のための間仕切り・パーテーション設備など、生清環境面の改善にも配慮する必要があります。