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第3章 災害発生後の対応(2、3日〜約l月)

 一般的に大規模な災害においては、行政などの組織的な応急救助の実施が可能となるまで災害発生後2、3日を要するといわれており、この時期から避難者の支援などの本格的な応急救助活動が開始されることになります。
 なお、災害の規模によって、この避難者に対する支援の期間は、災害発生後、概ね1週間から約1月程度と考えられます。

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 1 避難所の運営
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@ 避難所内における情報伝達体制

 避難所の運営については、災害発生直後は、精神的な動揺や関連設備の損傷などのため情報が的確に伝わらないことなどから、その運営が相当混乱することが予想されますが、災害発生後2、3日経過すると避難所の運営も一定程度の落ち着きを取り戻し、基本的なルールなどが確立してくることとなります。
 このような中で、食料や救援物資の提供などが適切に行われることが必要となりますが、市町村などにおいては、特に災筈弱者に対する情報提供に留意し、これらの人たちが食料などの提供を受けられないことのないように配慮する必要があります。
 聴覚障害者のように一見すると障害者と気づきにくい人たちへの情報伝達について、手話通訳者の配置や掲示板の設置など、特に配慮する必要があります。
 また、避難所における高齢者や障害者などの保健医療福祉サービスに対するニーズを適切に把握しながら、必要なサービスを提供できる体制を確保する必要があります。
 この際、行政のみでは対応が困難である場合には、福祉関係団体、ボランティアなどの協力を得ながらサービス提供の体制を確保することも必要となります。
 また、一般的には避難所の設備などが災害弱者の利用に必ずしも十分に配慮されたものとなっていないことが予想されることから、避難所に避難している住民の自主的な活動による支援・協力体制づくりを促すよう努めることも必要です。

A 避難所における災害弱者対応窓口の設置

 避難所の運営に当たっては、一般の被災者とは別に災害弱者のための担当窓口を設置することも必要になると考えられますが、行政サイドの人員では十分な人的配置が困難なことも予想されるため、このような取組みには福祉関係団体やボランティアなどの協力を得ることも考慮する必要があります。

B 社会福祉施設などの活用

 地域に社会福祉施設などが設置されている場合は、市町村は福祉的な援護を要する人たちのための避難所として、平常時からあらかじめ指定しておくなどの対応について検討しておくことが必要です。
 災害発生直後は、災害弱者が一般の避難所に緊急的に避難することはやむを得ませんが、できるだけ速やかに保健医療福祉サービスが受けられるよう社会福祉施設などに移す必要があります。

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 2 応急仮設住宅の設置
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@ 応急仮設住宅の必要戸数の把握

 災害発生後2、3日経過すると本格的な災害救助の取組みが開始されますが、その際重要なのは、まず、生活の場である住宅の確保です。災害救助法による応急仮設住宅については、被災の状況に応じて、その設置戸数に一定の基準が定められていますが、市町村は災害発生後速やかに、被災者の住宅の被害の状況を把握し、必要な応急仮設住宅の設置戸数を把握することが必要です。

A 応急仮設住宅建設用地の確保

 また、災害発生に備えて、日頃から応急仮設住宅の建設用地を確保しておくことが必要です。
 災害の規模にもよりますが、応急仮設住宅を早期に大量に建設するためには、その建設用地は、所有者との調整の必要がない、地方公共団体の公有地が最も適切です。
 建設用地としては、できる限り住宅地としての立地条件に適した場所を選定することとし、この場合には、上下水道や電気、ガスなどの生活関連設備の整備状況に加えて、医療機関、学校、商店などの立地条件について総合的に考慮する必要があります。

B 応急仮設住宅の仕様、設備

 整備の方法や水準については、市町村は被災者の世帯構成を的確に把握し、それぞれの世帯構成にあった仕様の住宅を建設するように努める必要があります。
 なお、応急仮設住宅には高齢者や障害者などの災害弱者が入居することを想定し、浴室やトイレヘの手すりの設置や入り口の段差解消(スロープの設置など)に配慮する必要があります。

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 3 応急仮設住宅の入居決定
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@ 応急仮設住宅の入居募集及び決定

 急仮設住宅の入居募集に当たり、被災住民に対する広報などに十分配慮する必要があり、特に、障害者などに対する周知については、その情報伝達方法に留意する必要があります。
 また、応急仮設住宅の入居決定に当たり、市町村は、入居する高齢者や障害者などの保健医療福祉サービスのニーズを的確に把握しておく必要があるとともに、少なくとも避難所で受けていたサービスが継続して受けられるよう配慮する必要があります。
 応急仮設住宅の入居に当たっては、避難所での生活に困難な問題を抱える高齢者や障害者などの入居を優先することが一般的ですが、阪神・淡路大震災における教訓として、高齢者などの入居を優先した結果、高齢者などが集中する応急仮設住宅が発生し、その後の生活支援などに地域住民の協力が得られにくい状況が生じるという問題が明らかになったことから、このようなことも十分に留意する必要があります。

Aコミユニテイ形成への配慮

 応急仮設住宅での生活が長期に及ぶことが見込まれる場合は、市町村は応急仮設住宅におけるコミュニティ形成の視点から、災害弱者のみが集中することのないように配慮する必要があります。
 また、応急仮設住宅での生活が長期に及ぶとともに、一定の集積が見込まれる応急仮設住宅には、コミユニティ活動などの拠点となる集会所などの設置についても検討する必要があります。

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 4 応急仮設住宅への保確医魔福祉サービスの捉供
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 応急仮設住宅設置後は、応急仮設住宅以外に居住する住民も含めて行政サービスの提供が必要となりますが、特に、高齢者や障害者などについては保健医療福祉サービスの提供に配慮する必要があります。
 被災した市町村では、一般の被災者対策などに保健・医療・福祉部門の職員が従事する必要があるため、高齢者や障害者などの対応に十分な職員体制を確保できない場合には、一般の被災者対応の部門に他の市町村などからの職員派遺などの支援要請を行うことや、場合によっては、必要に応じて保健・医療・福祉部門に対する職員派遣の支援要請を行うことも検討する必要があります。このように、他市町村の支援を受けながら、できるだけ早期に通常の保健医療福祉サービス提供の体制整備を図っていく必要があります。
 具体的なサービスの提供については、保健婦による巡回健康相談や訪間指導、社会福祉施設などの職員で構成する介護支援チームの派遣、社会福祉協議会による入浴介助サービス、児童相談所職員によるメンタルヘルスケアなど、地域において活用可能な社会資源の状況などを踏まえ、適切に対応する必要があります。
 また、応急仮設住宅での生活が長期に及ぶ場合、聴覚障害者などへの各種サービスに関する情報伝達手段の確保について十分に配慮する必要があります。
 さらに、災害による心理的打撃のため、不眠や精神的不調などを訴える人たちが多くなることが考えられます。特に、児童にとって災害によるショックは大きく、最悪の場合には両親などを失ってしまうことなどにより、非常に大きな精神的ダメージを受けてしまうことが予想されます。市町村は、このような児童について早急に把握し、児童相談所などとの緊密な連携のもとに的確に対応する必要があります。

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 5 在宅の要援護者への支接
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 急仮設住宅の高齢者や障害者などと同様に、在宅の災害弱者に対しても保健医療福祉サービスの提供について配慮する必要がありますが、災害時においては、平常時と異なりサービス提供の内容や頻度に一定の制約が生じることも予想されることから、市町村は、災害弱者の状態によっては、平常時のサービス提供体制が確保されるまでの間、病院や社会福祉施設への一時的な入所などについても検討することも必要です。
 また、災害時においては、さまざまな心理的な動揺や体調の変化が予想されることから、市町村は、同居家族がある場合には、家族も含めたメンタルヘルスヘの配慮など、平常時以上にその状況把握に注意を払う必要があります。
 在宅の災害弱者については、地域の民生委員・児童委員や福祉関係団体などとの連携を確保し、その実態把握に努め適切な対応が可能となるよう配慮する必要があります。

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 6 保確福祉サービスなどヘのボランティアの活用
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 北海道南西沖地震や阪神・淡路大震災などを契機として、災害時における道民のボランティア活動に対する関心が高まってきており、今後もさまざまなボランティアによる支援が予想されます。
 高齢者や障害者などに対する福祉救援活動については、ボランティアの自主性を尊重しながら、それぞれのボランティアの人たちが持っている技術などについて十分に把握した上で、それぞれに見合った活動内容を設定し、行政あるいは福祉関係団体の責任のもと、的確な連絡・調整(コーディネート)を行うなど、ボランティア活動が円滑に行われる体制づくりに配慮する必要があります。

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 7 医療機関や杜会福祉施設などどの受入れ調整
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 災害発生時に緊急に対応する必要がある高齢者や障害者などについては、既に医療機関や社会福祉施設への緊急入所などの措置が講じられていますが、災害発生後2、3日が経過すると災害発生時の混乱も一定程度落ち着きを取り戻している時期となっており、避難所などに避難している高齢者や障害者などの状況把握もかなり進んでいる時期になります。避難所での生活を継続することが困難であったり、今後の仮設住宅などでの生活に困難が見込まれる高齢者や障害者などについては、市町村と協力の上、医療機関や社会福祉施設などとの協議によってその受入れ体制を調整し、対象者の合意のもとに施設入所などについて検討する必要があります。
 なお、市町村においては、平常時から医療機関や社会福祉施設などと災害発生時の受入れについて協議を行い、災害時における受入れがスムーズに行われるよう準備をしておくことが必要です。
 また、社会福祉施設などにあっては、災害時の対応について自らの施設職員のみでは対応が困難な場合も予想されることから、平常時から近隣の施設間での支援について協議を行っておく必要があります。

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 8 周辺市町村などどの広域的な支接体制の整備
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 災害発生時においては、平常時には予想し得ないような、さまざまな行政ニーズが発生し、災害の規模によっては被災市町村のみでの対応が困難となる場合も予想されます。
 市町村は、さまざまな災害による被害を想定し、平常時から周辺市町村などと災害時における相互支援について、協定を締結するなど広域的な支援体制を整備しておく必要があります。
 なお、その際、災害時に特別の配慮を必要とする災害弱者への支援についても、関係する市町村や医療機関、社会福祉施設との間での提携について取り決めておくことが望まれます。
 また、近隣の社会福祉施設間で災害時における相互の支援について提携する場合においても、地元市町村の災害対策との整合性を図る意味からも、地元市町村との協議のもとに提携するよう配慮する必要があります。
 さらに、市町村においては、災害時における食料などの救援物資の確保がスムーズに行われるよう関係業者との協定を締結するなど広域的な供給ルートを確保しておくことが望まれます。


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