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交通権を考える連絡協議会

会報第18号

(1997年9月10日発行)


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第6回総会報告・討議内容

事務局長 宮下 高

宮下事務局長

 交通権を考える連絡協議会第6回の総会が6月15日かでる2・7で行われた。
 開会あいさつのなかで我妻 武副会長から東京都の路線バス視察の報告が行われた。
 続いて後藤 昌男会長が、よさこいソーランの参加や佐藤きみよさんのアメリカ行きなど障害者の努力による社会参加が進むなか障害者プランの具体化、道・札幌市福祉条例の実施、人権問題などを各団体と連携して進めていくことが重要だと強調された。
 引き続き議事にはいり、議長に全国障害者問題研究会北海道支部の伊志嶺氏を選出し、議事に入った。
 昨年の事業経過を宮下事務局長が報告した。
 まず、仙台市へのフェリー点検ツアーでは障害者仕様を考えた船が一部あるものの大半は船室やトイレが障害者が利用できず、食堂にいくにも階段があるなどの問題がある。ただ、フェリー会社が障害者利用時のマニュアルを作成し、対応していることは不便ではあるが、利用は不可能ではないといえる。しかし船の更新時のことを考えるとフェリー会社に対して要望書を提出していく必要がある。
 リフト付き路線バスについては仙台市交通局の話しを聞き、やる前はいろいろ考えたけれど実際にやってみると取り越し苦労が多かった。ある程度のめやすをつけ試験的にやって、改善していくことが最良の方法ではとの話しを紹介。
 交通権110番では、昨年同様2日間行ったが、例年になく相談件数が少なかったことは、マンネリ化と運動の広がりが札幌圏内に限定されていて全道的なものになっていないことが教訓としてだされた。今後の課題として、道内各地のネットワーク作りにカをいれていく必要性が強調された。
 新たに編成されたスーパーおおぞらの点検ではホームと車両の隙間の広さ、緊急用の呼ぴ出しボタン、通路の幅などお年寄りや障害者の意見を聞いた内容になっていないことなどが報告された。

 今年度の事業計画では
1.交通権110番の実施
  全道的なネットワーク作りを基本に宣伝活動を行う。
2.交通権参加団体と協力しての交通点検活動の実施
3.点検ツアーの実施
 スーパーおおぞらに乗り、乗降時の連絡体制と多人数の車いす乗車の対応などのソフト面での点検
4.参加団体との交通に関する意見交換の実施
  などが提案された。

 また、昨年度の決算報告と今年の予算案の提案が石川会計からだされた。
 その後質疑が行われ、交通権の運動の総体的中身についての質問が出され、北海道の冬の実情を考えると実現させることは至難ではあるがドアからドアの交通システムが必要で、交通権運動の目的でもあるとの説明がなされ、その後、議案全てが全会一致で採択された。



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総会記念講演『人権としての交通権』
講師 石田 明義
(弁護士・北海道合同法律事務所)

@私たちが石田先生にこのテーマで講演をお願いした理由
 国際障害者年を契機に法制度や施策は大きく前進したが、まだまだ21世紀の扉を開くのにふさわしいものにはなっていない。
 別なことばで云うと、移動制約者の課題が人権保障の視点で貫かれているかどうかということである。新しい世紀に「人権侵害」と「差別」を引きずってはならない ――事務局で熱心に論議をした結果このテーマを決めた。
A講演内容の要約
1.基本的人権は人類不変の原理
 基本的人権は人間として生まれ人間として生きるもろもろの権利である。20世紀は戦争や公害などによって障害者をつくり出してきた時代であった。21世紀は障害者の権利が守られる時代にしなければならない。
2.交通権ということば
 江戸時代にはこういう言葉はなかった。10年ほど前の和歌山国鉄民営化訴訟の時「交通権を守れ」と言った。あったものがなくなるのだから「守れ」という意味がよくわかった。今私たちは交通権を基本的人権として「守れ」と言っている。人間として生きていくうえで譲り渡せない権利であると主張している。だからどんなに小さな要求も人権保障の観点で見直す必要がある。
3.交通権は単なる物の移動ではない
 教育を受ける、選挙をする、税を納める、裁判をする、働く、病院に行く等々、こうしたこと全てが人間の移動を伴う。この移動が実質的に平等でなければならない。憲法第25条の「健康で文化的な最低生活の保障」や第13条の「個人の尊重、幸福追求の権利」はそのためにある。すなわち交通権は生存権であり幸福追求権である。そして第11条で「侵すことのできない永久の権利」として規定してあることを忘れてはならない。
 諸活動をいとなむ源となる交通権、それはもともとあった。その権利が侵害されているのである。今間題になっている敬老パスは人間らしく生きるために権利として獲得したものである。
4.障害者基本法の理念
 「全ての障害者は社会を構成する一員−−−あらゆる分野の活動に参加する機会をあたえられるものとする」と記してある。障害者の権利宣言では「−−−同年齢の市民と同等の基本的権利を有する」とある。交通権は平等に社会参加するための必要不可欠な権利である。
5.公的責任
 障害者の人権を守ることは、憲法・法令にてらして基本的には公的責任である。また企業に社会的責務を果たさせることも必要である。その意味からもっと要求してよい。障害者も社会の活力を生む原動力になり得る。「隣の芝生が青くみえる」そう思ったら自分の幸せのためもっと意見を表明すべきである。
6.運動を大きく
 障害者はライフサイクルの中の全てでハンディがある。その意味で障害者運動はトータルの運動ができる有利性をもつ。その運動の中から人間のつながりが広がる。社会が生き生きする。文化がひろがる。
7.平和宣言のように交通権宣言を
 各市町村で平和宣言を採択する運動が展開している。交通権を守ることについても同じ運動にできないか、それが条例化にもつながる。市民みんなに共通するニーズとして確認することが必要と考える。

(以上、骨子だけ要約して掲載いたしました。血の通ったあたたかい言葉は紙面スペースの関係で割愛せざるを得ず、またいい得ない点も多々あって、講師先生に失礼だったかも知れませんがお許しをいただきたいと思います。)

後藤記



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「スーパーおおぞら」車内点検
北海道旅客鉄道(株)に改善を求める『要望書』を提出

 札幌・釧路間を走るスーパーおおぞらが新たに運行することになったのに伴い、交通権を考える連絡協議会では4月19日、車内点検ツアーを実施し、その結果を「要望書」にまとめ、6月13日、坂本真一社長宛提出。同時に長時間にわたって、点検結果を説明、間題点を指摘し改善を求めました。
 会社側からの対応は総務課長代理、運輸部運用車両課副課長、営業部サービス課長代理、営業部サービス課係の各氏4名でした。
 要望事項に対する回答は次の通りです。
「要望と回答」
1.ホームと列車の間の間隔が約23pと広く肢体障害者、車椅子及び視力障害者、お年寄りの乗り降りが危険です。また、列車の入り口のステツプが高く障害者、お年寄り、子供、一時的障害者(骨折者、妊婦、ベビーカー等)にとって大変不便です。新幹線で採用しているような自動装置を設置してください。

(回答)新幹線には「新幹線規格」というのがあり、それにそって設置されている。在来線ではむずかしい措置である。ステップについてはスロープの設置等駅員のお手伝で対応している。駅ホームは昔からのものを使用しているところが多く、駅改築の機会に列車との間隔をせばめる努力をしている。

2.車内の通路は狭く車椅子が通れる幅になっておりません、航空会社が設置しているような通路用の車椅子を設置してください。

(回答)今月中にでも通れる車椅子に積み替える。スーパー北斗には積んでいる。

3.現在、縦列に設置しているハンディシートを横列に改善してください。(上下に移動する肘置きシートにも車椅子使用者が座れ、介助者も横で障害者の状況を見れる)。
4.車椅子のスペースの数を増やしてください。

(回答)運輸省のガイドラインが前後で対面するようになっている。数についてもガイドラインに示されている。ひじ掛け五人分は上がる。

5.トイレに設置している呼び出しボタンを押したときに無線で車掌と直接応答出来るようにしてください。

(回答)(呼び出しは)大切なことなので前向きに考える。今後の開発時にはよく勉強する。

6.障害者に対応するためのマニュアルを作成し、社員の教育を徹底し連絡ミスのないようにしてください。

(回答)社員講習を実施している。昨年から小樽・札幌・岩見沢でやっている。その中で周知徹底をはかるよう努めている。

7.全座席に点宇表示をして下さい。

(回答)一部分に表示している。車掌、駅員で対応している。

8.列車に乗せるだけでなく座席に座るまでの介助をして下さい。

(回答)そのように教育している。事前連絡が欲しい。

 その他、電動車椅子の乗車について。−−北斗でもおおぞらでもまだない。車椅子座席の年間利用度について−−スーパー北斗の場合、平成8年度申し出があった人の分だけで3.1%、114回とのこと。
               (1日10座席、年3650席で計算する)
 私たちからは、スーパー北斗に関しての要望内容が一部改善され、採り入れられたことを評価しながら、今後は設計図の段階からみせて欲しいことを強く要請しました。

(後藤記)




我妻副会長がトイツプ大賞を受賞!

 新聞等の報道で皆さんもすでにご存知と思いますが、当会の副会長・我妻武さんが、日本青年会議所が主催する1997年TOYP(トイップ)大賞に選ばれ、さる7月25目表彰式が行われ、受賞しました。
 TOYPとは「傑出した若者」の英語の略だそうです。交通権を考える連絡協議会結成以前から「メビウスの会」代表として活躍し、現在DPI(障害者インターナショナル)世界会議の札幌誘致運動の中心メンバーとしての活躍が評価されたもので、札幌青年会議所に推薦されての受賞です。私たちの仲間の名誉を共に喜ぴたいと思い、改めてお知らせする次第です。



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’97私たちもバスに乗せてくれ
運動を展開させよう!

水島 明

 人口170万人の大都市・札幌に於て未だに身体にハンディを持つ者が自由にバスを利用できないのは、やはりおかしい。
 地下鉄はある程度整って来てはいるが、それすら完全ではない。地下鉄を点とすれば、それを結ぶ線の存在である路線バス等に車椅子者が全く乗れない現在、特に施設や学校を卒業したばかりの、交通手段を確保できない者たちにとっては、進学や就職、あるいは作業所通いや行事などの社会加への道には、もの凄い障壁がある。
 それに伴い、高齢者の交通事故急増は、自動車免許の定年制導入の動きも出始め、そうなると益々公共交通の整備は障害者だけの問題にとどまらず、誰にでも乗りやすいバスの導入は早急に進める必要がある。
 7月23日(水)に我々は同士12名と札幌市交通局を訪れ、今現在身障者対応の路線バス計画はどの様に進行しつつあるのか伺い、ノースーテップやリフト式バス等を早急に(1年以内)導入して欲しい旨を陳情、障害者の現状についても参加者全員がその思いを訴え、交通局側も勉強不足な面などを認め、事前に行われた三菱自動車のノーステップバス試乗会(道庁主催)の模様のビデオと要望書を手渡した。後日書面回答されますが、口頭では『今秋の予算編成時に導入を検討して行きたい』にとどまり、返答次第では第ニ次、第三次行動へと運動を強めて行く。
 又、今後は同時に結成した障害者のギターバンド「ハンディズ」を旗頭に、テーマソングの「バスに乗せてください」他数曲のオリジナルソングを掲げて、あらゆる場で、公共整備の真のあり方を訴えていきたい。
 「今日は天気も良いし、散歩がてらバスに乗って街へ行こうか」なんて障害者間でも会話できる、そんな人に優しい社会づくりのためには、もう黙っちやいられない、「私たちもバスに乗せてくれ!!」運動を皆で展開させよう。
 ご協力をお願い致します。

(7月24日付け「北海道新聞」及び「北海タイムス」朝刊に掲載されました。)




        「バスに乗せてください』

作詞・作曲 角田 浩一
編曲 水島 明
うた ハンディズ

        1. あの青空の下に 行ってみたくて
           あの青い海を  ながめてみたくて
           あなたの力を  少しください
           となりの席を ひとつ 空けてください
           そしてボクたちも バスに乗せてください

        2. あの公園通り  歩いてみたくて
           あの買い物通り 歩いてみたくて
           段差を ひとつ なくしてください
           優しい街を 一緒に 作りませんか
            (間奏)
           だから私たちも バスに乗せてください
           (繰り返し)
           みんなが乗れる 優しいバスを
           優しいバスを  走らせてください




「交通権110番」
常設ファクシミリの設置!

事務局に常設のファクスが設置されました
「いつでも、誰でも、どこへでも!!」
常に皆さんからの相談、情報の提供などを受け付けています
  ファクス番号=0123−33−1850



事務局だより

5月14日 かでる2・7午後6時30分 交通権会議
      総会資科作成、講師依項など
6月 3日 かでる2・7午後6時30分 交通権会議
      総会当日の役割・準備
6月13日 JR北海道要望書提出    JR北海道本社
6月15日 かでる2・7 交通権総会13時〜 講演15時〜
7月18日 身障センター午後6時30分 交通権会議
      スーパーおおぞら点検について
8月12日 かでる2・7午後6時30分 交通権会議
      点検ツアー開催要綱作成・発送などの分担




『編集後記』

 平成9年度、交通権を考える連格協議会の第6回総会が終わって早2カ月半。事務局の人にも動きにも様々な事が重なって、編集作業が思うように進まず、発行がこんなに遅くなってしまいました。反省することしきりです。
 ただ、色々な動きも目的は同じ。幅広く多様な動きを、懐深く受け止め抱え込んで行くことで運動の発展につながればこんな結構なことはありません。総会でも団体会員の新しい参加気運が感じられ、今後に期待を抱かせます。継続は力なり!です。倦まず、たゆまず、遅々とした歩みではあっても続けて行きましよう。

(T.T)



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